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-いつか訪れるかもしれない、理不尽で答えのない選択肢-

ツーサイズ-いつか訪れるかもしれない、理不尽で答えのない選択肢

○登場人物
・堂島　　男。二十五歳。
・烏野　　女。十九歳。
・宇治上　男。三十二歳。
・理峰　　男。四十五歳。
・青年
・老婆
・避難民　最低2人。人が足りなければ青年と老婆と兼役でも可。
・避難民、信者、役人、男、女(音声) (複数。役者がいるのであれば実際に登場させても良い)
・選帝、堂島父(音声)

○本編

女(音声)　あなたの未来を決定する、選帝放送です。この度選択された、未来を、お伝えします。日本は、S国との貿易をより一層盛んにすることで、貧困層への物資支給、また食料品の高騰化を防ぐことが可能になるとの未来を予測。その為、これらを実行へ移します。それでは、次の選択まで、幸せにお過ごし下さい。

　舞台上には、時計の針の音。堂島、客席へ入ってくる。
　堂島、ふらふらと歩きながら頭を抱えたり、ふさぎこんだりする。

女(音声)　あなたの未来を決定する、選帝放送です。この度選択された、未来を、お伝えします。三日後に、A地区にて、地震が起こる未来を予測。これを回避する為、ニ日後の十五時までに、避難区域へ移動して下さい。以上となります。それでは、次の選択まで、幸せにお過ごし下さい。

　地鳴りの音がする。

男(音声)　おい、選帝様の予測は本当だったな。

女(音声)　あたし、外で仕事する予定だったから危なかった……全部選帝様のおかげだわ。

男(音声)　選帝教への入団を、我々は歓迎します。入団すれば、いずれあなたの望む幸せな未来を、全て決めて下さることでしょう。

女(音声)　ねえ、来週はどんな未来を選択して下さるのかしら。楽しみね。

女(音声)　あなたの未来を決定する、選帝放送です。この度選択された、未来を、お伝えします。今回選ばれた未来は、何も、ありません。以上となります。それでは、次の選択まで、幸せにお過ごし下さい。

女(音声)　あなたの未来を決定する、選帝放送です。この度選択された、未来を、お伝えします。今回選ばれた未来は、何も、ありません。以上となります。それでは、次の選択まで、幸せに……

　地鳴りの音や、大きな爆発音が響き渡り、辺りは静まり返る。

堂島(音声) 初めは、音を求めて彷徨った。朦朧とする頭で、黒い壁にぶつかりながら、段差を降りていった。長い長い螺旋の端、光を見つけた先にあったのは、街。いや、街だった世界。

　火が燃え盛っている音と共に、人々の嘆き声。

堂島(音声) ここは、どこだ。僕はうずくまる人々を横目に、まっすぐ進んでいった。いつまでも、いつまでも……ああ、一つ、思い出せることがある。僕は誰かを、みんなを幸せにしたくて、大人になったってこと。僕はその為に、何かをした。でも何を？　どうやって人々を幸せに？……思い出せない。

　堂島、舞台へと上がり、客席を見る。

堂島　ダメだ、頭が痛い……僕は救いたかっただけなんだ、みんなを。ごめん、ごめん。

　堂島がふらふらと裏へ入ると、舞台には灰色の布がかかった小屋がニ、三つ置かれており、背景には一際長い白い塔がある。
　理峰、ゆっくり歩いてきて辺りを見回す。

理峰　ふん、紛れたようですね。見た目も動きも、まるで鼠。こう歩き回っていては、せっかくの制服が汚れてしまいます。迷惑な話です。本来、私がこのような雑務をする必要などないのですが……それだけ人手が足らなくなっている、ということでしょう。このような小事に時間を割いている場合ではありませんが、これもまた役人の務めですから……仕方がありません。

　理峰、去っていく。少し経って、宇治上が入ってくる。

宇治上　はあ……見つかりやしねえな。こんな面倒なことやめて、さっさと休みてえよ……おっと、いけねえいけねえ、あの上司に見つかったら、俺も路頭に迷っちまう……早いとこ、見つけねえとな。

　避難民達、宇治上に近づいて来る。

避難民　ねえ、役人さん！選帝様はなんで何も言ってくれないの！？

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