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ぜっっったいに負けられない戦い

『ぜっっったいに負けられない戦い』

〇登場人物
赤坂　　　“絶対王者”。連勝記録が懸かっている。
金田一　　 “黒髪のチーター”。告白が懸かっている。
夕木　　　“トラックの悪魔”。妹の手術が懸かっている。
大谷　　　“大会荒らし”。占いの結果が懸かっている。
塔屋　　　 “期待の超新星”。村興しが懸かっている。
凪　　　 “音速の貴公子”。プロポーズが懸かっている。
日比谷　　 “笑顔のスピードスター”。引退が懸かっている。
鶴間　　　“現代のシノビ”。祖父の遺言が懸かっている。
紫野　　　実況。声のみの出演。

紫野　　　さぁ、全国高等学校陸上選手権・男子400ｍ決勝。本日遂にこの日がやって来ました。全国各地から集結した８名の選手は今、前室のロッカールームにて各々の気持ちを高ぶらせていることでしょう。……私達の取材に対し、彼等は１人残らずこう答えていました。…これは、絶対に負けられない戦いだ、と。
　・明転。ロッカールームにて。赤坂が１人。
赤坂　　　ふぅ……大丈夫。やれる。俺ならやれるさ。
　・金田一、登場。
金田一　　よお〜。
赤坂　　　今、精神を集中させているんだ。邪魔しないでくれるか。
金田一　　アヒャヒャ、つれないな〜。ちょっとお話しようぜ？
赤坂　　　…うるさい。どこかに行け。
金田一　　そう言うなよ〜“絶対王者”赤坂君？
赤坂　　　そう呼ばれるのは好きじゃない。
金田一　　あらそうなん？
赤坂　　　ああ。…その称号がこの3年間、俺のプレッシャーになっている。
金田一　　は〜〜〜そ〜なんだ。強すぎるってのも考えもんだね〜
赤坂　　　……はぁ。そういうお前も、
金田一　　お、お喋りしてくれる気になった？
赤坂　　　お前が独りで騒ぐよりマシだと思っただけだ。…お前の方こそ、今大会ではえらく活躍してるじゃないか。
金田一　　え、そうかな〜分かる？分かっちゃう？俺の頑張り？
赤坂　　　分かるさ。…メディアも騒いでいるぞ。“黒髪のチーター”の復活だとな。
金田一　　アッヒャヒャ、俺もその物騒な異名好きじゃないんだけどな〜
赤坂　　　そうか。すまん。
金田一　　気にせんでいいよ〜チーターは格好いいから許してる。にゃ〜お。
赤坂　　　きもい。
金田一　　アヒャヒャ、辛辣〜
赤坂　　　それで？遂に日本一を狙う気になったのか？
金田一　　まぁね〜
赤坂　　　…そうか。俺は嬉しい。
金田一　　へ？
赤坂　　　今まで何度かお前と対戦してきたが、お前のその、大会が終盤になるにつれて露骨に態度に表れる「飽き」や「諦め」が俺は嫌いだった。
金田一　　 ……。
赤坂　　　だが遂に、高校生活最後の大会でお前と本気の真剣勝負ができる。…それが、俺は本当に嬉しい。
金田一　　あぁ〜…
赤坂　　　宜しく頼む。どちらが勝っても恨みっこ無しの真剣勝負だ。
金田一　　あ〜その〜…実はさ〜
赤坂　　　うん？
金田一　　お前に負けてほしいんだよね。
赤坂　　　……うん？
金田一　　つまり、俺に勝たせてほしいのよ。ほんの少し手を抜く、とかでいいから。
赤坂　　　……お前、ふざけているのか？
金田一　　いや、大真面目。
赤坂　　　俺に八百長をやれと？
金田一　　ま〜そういうことにるかな？
赤坂　　　…去れ。お前と話すことはもう無い。
金田一　　ちょっ、赤坂君、
赤坂　　　お前には失望した。
金田一　　赤坂君！
赤坂　　　うるさい。
金田一　　聞いてよ！

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