サンドリヨンの病熱
殺し屋シリーズ2部:番外編
メガロポリスの裏社会において絶大な勢力を誇るマフィア「ベルトリオ」ファミリー。
「家族」の絆を何より重んじる彼らの拠点は「ホーム」と称され、日々多くの組員が出入りする。
幹部に言伝を残し、組長室を後にするのは若き頭目、レオ・ベルトリオ。
レオの姿を認めるなり、掃除をしていた下っ端組員が顔を上げ、声をかける。
ルカ:あっ、ボス、お疲れ様っす! お出かけですか?
レオ:ああ、ちょっとな。
ルカ:誰か付けましょうか。
何だったら俺が……。
レオ:いや、ただの個人的な野暮用だ。一人でいい。
ルカ:そうっすか……?
でもマジで気ィつけてくださいね。
ボスももうすっかり有名人なんすから。
レオ:買い被るなよ。じゃあ行ってくる。
留守を頼んだぞ。
ルカ:うっす!
出ていくレオ。
その後姿をじっと見つめるルカ。
ルカ:(……ってなカンジで最近、ちょくちょく一人で出かけることが増えてんだよな、ボス。)
(毎回、誰も付けずにね。)
(いや、わかってる。優しんだよボスは。働き詰めの俺らに気を使ってくれてる。)
(でもなぁ、それだけじゃねぇ気がするんだよなぁ……。)
賑やかな大通りを歩いていくレオ。
やや離れた後ろで、物陰に隠れたルカが尾行している。
ルカ:(そして今、俺はボスを尾行している。)
(どうやら幹部の兄貴たちも、同じようなことを考えていたらしい。)
(ボスのことは心配だが、プライベートまで邪魔したくねぇ、と。)
(で、俺に白羽の矢が立ったってワケ。)
(見た目があんまりマフィアっぽくねぇお前が適任だってさ。)
(ちょっと言い方引っかかるけど、やってやるぜ。)
(ジャパニーズ・ニンジャの如し隠密ボディガード、このルカがバッチリ遂行してやるからな。)
コソコソと後をつけていくルカ。
通行人が不審な目を向けている。
時と場所は変わって、下町の一角に建つカフェテラス。
一席で女性の二人組が向かい合っている。
シャーク:珍しいじゃねぇか、お前が泣きついてくるなんてよ。
ホープ:……ごめん、先生。忙しかったんじゃない?
シャーク:気にすんな、今日はオフだ。
ウチにいてもムカデのゲームがうるせぇしな。
ホープ:そう……それなら良かった。
言うものの、どう切り出そうか迷っている様子のホープ。
シャークがコーヒーを口にする。
シャーク:で、どうしたよ。手に余るシノギでも抱えたか?
ホープ:手に余るって意味じゃ間違ってないんだけど……。
シャーク:言っとくが、あたしから教えることなんざねぇぞ。
お前もプロだろうが。自分の頭で動け。
ホープ:うん……そう、だよね。
目を伏せるホープ。
つかの間の沈黙のなか、シャークがため息を落とす。
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