『あっちでもこっちでもない戦場』中編
『あっちでもこっちでもない戦場』(中編版)
[2020.11.24. 第一稿]
[2020.12.31. 第二稿]
[2021.01.15. 第三稿]
初出=2014.10.29. 第二幕のみ
加筆中編版=2020.11.執筆開始
<登場人物> ●出場 ◎名前のみ □声のみ
●二等兵=宇喜多 ●一等兵=戸川 ●小隊長=長船(おさふね)
◎明石さん ◎彼女
□住人1 □住人2
※この作品は架空の国・戦争を舞台にしています。また未来に起こりうる戦争を想定してもいません。
完全なるフィクションです。
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【導入】
■■どこかの空間。宇喜多の語り。
宇喜多「僕は兵隊でした。兵隊として戦争にも行きました。
でも戦場で、僕は何もしていません。結局一人も、殺すようなことはなくて。それは本当に、神様に感謝しなくちゃ・・・。
短くて、大して語ることもない僕の兵役ですが、その中で僕が持ち帰った物は、たった一つの物語です。僕が自分で見聞きした物語。僕はこの物語が『優しい何か』だったと、信じたい。
皆さんはどう感じるでしょうか。皆さんが感じるものが、僕らの救いとなるかもしれない。
僕と戸川さんと長船小隊長の三人、それから、明石さんと、あの『彼女』の」
■■宇喜多、一礼して去る。
■■転換。
【第一幕】戸川が語る小隊長の話。新米が訓練で一人前になり、戦場へ行くまでの話。
〈シーン 戸川の日常1〉
■■抜き足差し足、静かに歩く戸川(とがわ)
■■ここはボロアパートの一室。戸川の部屋である。
■■ドアを開けて閉める。
■■静かな声で.
戸川「俺は毎日、朝早くに家を出ます。このボロアパートの住人を起こしちゃいけないんで、静か〜に、静か〜に。
今は朝の3時半。
俺はパン職人なんです。4時には作業開始。
遅くても5時からは窯でパンを焼き始めないと、
最初のパンが7時に間に合いませんから。
■■ドアは静かに閉めることができた。だが、階段でつまずく。
■■ドンガラガッシャーン!
住人1「うるさいぞパン屋!」
住人2「何時だと思ってんだ!」
戸川「口の悪い奴らですが、まぁ誰だってこんな早朝にうるさくされたら怒りますから。
ご近所仲は良いんですよ。先週も花房くんちでたこ焼きパーティーしましたし、その前は岡くんちで流しそうめん会をしました。
ここの奴らはみんな田舎から出て来た一人者で、境遇が似てるのもあって、助け合って生活してます」
住人1「うるさいって言ってんだろ!?」
住人2「誰と喋ってんの!?」
戸川「悪い悪い! また夜にパン持って帰ってくるから勘弁してくれ~!」
住人1・2「おっけ~~~~~~zzZ」
戸川「俺はパン屋なんで、まぁみんな食糧の当てにしてるんですわ。いつものことです.これが俺の日常.
でもこれが、俺が彼らと交わした最後の会話になりました」
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