いつかあの星を見に
『いつかあの星を見に』

世界観:物語の舞台は日本によく似た近未来の国家。だが5年前に勃発した戦争のせいで荒廃している。世界中が大戦に巻き込まれているわけではなく起きているのはあくまで国と国の戦争なため、平和な第三国へ避難すること自体は困難だが可能。

推奨キャスト数:4─6名

登場人物:
・彩芽(あやめ、女、15)─朗らかでどこか浮世離れした少女、料理が得意。
 戦争に駆り出された両親の帰りを待ちながら、施設で1人「留守番」を続けている。
・詠人(えいと、男、17)─己なりの正義を貫こうとする少年、運動神経抜群。
 祖国のため徹底的に戦うつもりだったが腕を負傷し前線離脱を余儀なくされた。
・美海(みみ、女、16)─軽快な性格の裏に脆さを隠した少女、オシャレ好き。
 親しい人が戦場に向かっては命を落とす状況に耐えられない。詠人の幼馴染。
・薫(かおる、男、16)─厭世的でシニカルな少年、博識。
 一夜にして街を滅ぼした生物兵器の後遺症に侵されており、寿命が長くない。
 後遺症により時折咳き込む。
・父(男)─彩芽の父親。施設の研究員。声のみの出演。
・母(女)─彩芽の母親。施設の研究員。声のみの出演。



○星が見える丘

   戦争が始まる前、平和だった頃の国の回想。
   舞台上に星空が映し出されている。

彩(声)わあ、綺麗…!
父(声)すごいだろう?これが1000年に一度の大流星群だぞ。
彩(声)1000年…?お星さまって、1000年に1回しか見れないの?
父(声)比喩表現だよ、彩芽。
    文字通り、1000年周期で流星群が生じるという意味じゃないんだ。
彩(声)はんはん。
父(声)実の所、流星群自体はそれほど珍しい現象ではないからね。
    だが気象条件や星の配列などによって、この地域から観測できる機会は限られている。
彩(声)ふんふん。
父(声)と言っても地球の自転の関係上、
    この先数十年はかなり頻繁な発生が見込まれているわけだが…
    それでも、「1000年に一度」と呼ばれるだけの美しさがあると思わないか?
彩(声)ほんほん。
父(声)特に今回の流星群は大規模なものでね、宇宙の謎について理解を深める
    きっかけになるのではと研究者たちの期待も厚く──
 
   足音。

母(声)あなた、子供相手に本気になりすぎ。
彩(声)あ、母さん!
母(声)彩芽が飽きちゃうでしょ?
父(声)いやあ、つい。
彩(声)大丈夫、父さんの話いつも面白いもん!
母(声)あら、そうなの?
父(声)さすがは父さんと母さんの子だなあ。
母(声)彩芽も将来は研究者かしらねえ。
彩(声)えへへ、なれるかなあ。
父(声)なれるさ。なんと言っても、お前の未来には無限の可能性があるからな!
彩(声)やったー!なるなる、絶対なる!
父(声)うむ、その心意気やよし!
彩(声)わーい!
母(声)──あのね、彩芽。今日は大切な話があるの。
彩(声)えっ、なあに?
母(声)父さんと母さんは、今度遠くへ仕事に行くことになったの。
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