エマージェンシー・ワン
フェルメール
ゴッホ
レオ
ピカソ
モネ
マネ
一色
警官1
警官2


プロローグ

フェルメール 「さて、まだ少し時間があるみたいですね。どうしようかな…あ、僕の好きな画家の話をしてもいいですか? 知ってるかな、ゴッホって言うんですけど。…え、『知っているに決まってる』? …そうですよね! 失礼しました。そう、皆さんもご存じのあのゴッホです。作品でいうと『ひまわり』『星月夜(ほしづきよ)』などが有名ですよね。今でこそ彼の絵には何十億ドルもの価値がついていますが、彼が生きている間に売れた絵はなんと、一枚だけだったそうです。ゴッホはそれを憂い、最期は拳銃で自らを撃ってその人生を終えました」

   銃声。

フェルメール 「おお…。(気を取り直して)ゴッホは絵画だけではなくたくさんの美しい名言も残しています。こほん(咳払い)。『考えれば考えるほど、人を愛すること以上で芸術的なものはないということに気付く』。これ、僕の一番大好きな言葉なんです。…あ、そろそろかな。今日のお話は、『エマージェンシー・ワン』」




   レコーダーが作動する音。

レオ   「__さて。これを聞いている、顔も知らないどこかの誰かさん。『闇街(やみまち)』からこんにちは。このボイスメッセージは一度しか再生されないよ。まあ、これを聞いたからってご褒美がもらえたり呪われたりするわけじゃないけど、君がもし暇なら聞いておいても損はないんじゃない? …まだ聞いてる? 君、相当暇なんだね。…ふふ、冗談だよ。じゃあ、そうだな。闇街って知ってる? …知らない。そうだろうね。世界の裏側なんて誰も知らないし、興味もないから。世界はここを認識していないし、ここで生きる僕たちも認識されていない。別に悲しむことじゃないよ。僕たちもその方が都合がいいんだ。じゃあ何でこれを発信しているかって? …さあね。僕が今から話すのは、僕たちにとって一番大切なあの数日間のこと。仲間も話したがってるから順番でね」

   フェルメール、手足を拘束されている。

フェルメール 「_本当に! 何も分からないんです!」
レオ   「いい加減本当のこと言いなよ」
フェルメール 「だから、本当に僕は何も知らないし、分からないんです!」
レオ   「分からないわけないでしょ。じゃあ何で僕たちのアジトにいたのさ」
フェルメール 「迷ったんです。さっきからそう言ってるじゃないですか!」
レオ   「だからそれが信じられないんだって」
フェルメール 「じゃあどうすればいいんですか!」
ピカソ   「レオくん。一度冷静になってみませんか? 先程からずっといたちごっこですよ」
モネ   「そうだよ。レオ、もう三時間もお兄さんとお喋りしてるよ。私たちとも遊ぼうよ」
レオ   「仕方ないでしょ。ゴッホが帰ってくるまでに片付けないと」
モネ   「そうだけどさ、ちょっと休憩しようよ」
フェルメール 「か、片付ける? 片付けるって、怖い方の意味じゃないですよね!?」
レオ   「分かんないよ?」
フェルメール 「え!?」
レオ   「白状しないならそういう意味で『お片付け』するからね」
フェルメール 「ひいい!」
ピカソ   「とにかく、早く解決するためにも少し整理して考えてみましょう」
レオ   「…分かった」
ピカソ   「今レオくんが聞き出そうとしているのは二つ。彼が何者なのか、そして、何が目的でここに来たのか。ですよね?」
レオ   「あともう一つ、どうやってここに来たのか。セキュリティ突破されてるんだから対策しとかないと」
ピカソ   「それに関して、侵入者さんのお答えは_」
モネ   「迷子になったんだよね?」
フェルメール 「は、はい!」
ピカソ   「そして、レオくんはそれが信じられないんですよね」
レオ   「うん。いや、信じられないというよりそもそもありえない」
ピカソ   「彼が刺客だと?」
レオ   「僕はそう思うよ」
モネ   「でも、刺客にしては弱すぎないかな?」
レオ   「油断させようとしたんでしょ」
モネ   「相手は私たちだよ? 実際レオは油断してないし。むしろ、闇街の外の人みたいじゃない?」
フェルメール 「や、闇街…?」
ピカソ   「ご存じないですか?」
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