イケてる私のイケてない恋
私:いらいらする。むかむかする。むきむきする。
バイトの帰り道。
あいつのことを考えてムカついて、
なんか足元に転がってる物体を蹴ったらジャストミートして、
猫の方に勢いよく飛んでった。
猫はニャーと鳴いてこっちを非難がましく見たから、
ウルセー、ニャーじゃねぇんだよ。
かわい子ぶってんじゃにゃーよと
威嚇(いかく)しかえしてやったら、逃げてった。
おほほ、ざまあだ。
私がこんなにいらいらしているのはあいつのせいだ。
あいつ、ユタカ。
バイト先のタメの男。
ちょっとボケてるっていうか、天然って言うか、
生きる気力が足りないって言うか。
でも何がむかつくって、
私がそんなあいつのことを好きになってしまったってことだ。
この私が。
この可憐で美しく、毎月バイト代のほとんどを服代に費やす、
17歳ピチピチ、ピチピチは死語か。
とにかく旬な綺麗系ギャルであるところの私がだ。
それが一方あいつはなんだ。
いつも同じような服ばっか着やがって。
お前それ中学の時も着てたんじゃねぇかっていう
ボロいパーカーとジーパン着てバイト来やがって。
たかがコンビニバイト、されどコンビニバイトだろ。
どんな出会いが待ってるかわからんだろう。
大体バイト先に、それも同じシフトに、
この私が入ってるだろう、この私がっ!
普通、恋をすると女はイキイキして、
肌なんかハリが出て、下から照明当てたみたいに
途端に美しくなるっていうじゃない。
それなのに、ナニッ、私のこのていたらく。
敗北感。挫折感。倦怠(けんたい)感。
そのせいで化粧のノリは悪いわ、目の下はクマが出来るわ、
ストレスのせいでニキビが出来た。
食いに食って体重も3キロも増えたんだぞ。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
私は雪山のてっぺんから叫びたい気持ちだった。
何故この私があんな奴を好きになってしまったのだ。
しかししょうがない。認めよう。
100歩譲って私はあいつが何故か好きだ。
そういえば昔から亀とか、トカゲとか、
無表情なものが異様に好きだった。
とにかく私はあいつが好きなのだ、
それは認めたとして、いつまでも悲観的になっている場合じゃない、
プラス思考で考えよう。
と私はある時、ある策略を画策し今日それを遂行したのだった。
私はありとあらゆる勇気を捻出(ねんしゅつ)し、
全てのプライドを投げうって、あいつに向かってこう言った、この私がだ。
「・・・ねえ・・・Lineとか、教えてくれない?」
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