ストレイホッパー
その新興都市の発展の背景には、一人の少女の存在がある。
「神の眼」をもつ少女の言葉には市民の団結を促す強い力があった。
人々は疑わない。神託に殉ずることこそが反映への道筋であると。
開けた玉座に祭り上げられる少女を無表情に眺める男がいる。
崇める人々とは一線を画するその佇まいに、怪訝を抱いた女性が口を開く。
アルマ:……ねぇ、そこの人。
声に気づいた男が振り返る。
アルマ:そう、あなた。もしかして旅の人?
ライゼ:なぜそう思う?
アルマ:この街の者なら、そんな目で見ないから。
小さく笑う男。
ライゼ:どんな目をしていたかな、私は。
アルマ:何か、哀れんでいるように感じた。
ライゼ:なるほど。
アルマ:ごめんなさい、初対面の人に……こんなこと。
ライゼ:いや、構わない。
君の言う通り、私はよそ者だ。
誰かに尋ねたいことがあったんだが、きっかけをくれて助かった。
女性が曖昧に笑う。
ライゼ:あの……「シャンカラ」の少女をもっと近くで見たいんだが、できるかね?
路地を歩いていく二人。
先導する女性が旅の男をそっと横目でうかがう。
男は思慮深く周囲に目を向けながら、女の後をついていく。
アルマ:(「旅の人」とは、いささか古風な言い回しだと思ったけれど、その人を形容するにはそれが一番ふさわしいように感じた。)
ライゼ:……アルマ、といったか。
アルマ:うん。
ライゼ:君こそ、この街の者じゃないのかい?
アルマ:どうして?
ライゼ:随分と無関心じゃないか。「シャンカラ」に対して。
目を伏せる女。
なおも先へ進んでいく。
アルマ:そうね、興味がない。
いいえ、興味を持ちたくない、というのが正しいかしら。
ライゼ:そんな人もいるんだな。
アルマ:私くらいだと思う。……そんな不届き者は。
ライゼ:不届き者、か。
アルマ:少しここで待ってて。シヴァに謁見の許可をもらってくるから。
ライゼ:シヴァ?
アルマ:神官のこと。
玉座を前にかしずく人々の中へと消えていくアルマ。
アルマ:(シヴァはよそ者に寛容だ。)
(「シャンカラ」はいつものように、荘厳な身振りでかの者の吉兆を占う。)
(何十回と見た光景。民衆が感嘆の息をもらす。)
(私はただ、無感動にその有様を見つめるだけ。)
「シャンカラ」の元から旅人が戻ってくる。
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