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ジナン

「　ジナン　」　　　作：つむぎ日向

登場人物：若者（家主）・ジナン（外国人）・先輩（若者のバイト先の先輩）
小道具　：漫画雑誌（１）・新聞（１）・宝くじ（１）・ナイフ

本編

　　　　開幕。
　　　　若者の部屋の中。
　　　　中央にジナンが居る。
　　　　ジナンにだけ明かりが当たる。
　　　　片言で話すジナン。

ジナン「皆サン、ハジメマシテ。私ハ、ジナント言イマス。兄弟居ナイケド、ジナン。私ハ、「オルトガル」トイウ国カラヤッテ来マシタ。皆サンハ、「オルトガル」トイウ国ヲ知ッテイマスカ？トテモ、トテモ小サイ国。極小デス。私ハ、ソンナ「オルトガル」カラ、ハルバル２０時間カケテ、コノニッポンニヤッテ来マシタ。２０時間デスヨ？２０時間ッテコトハ、アト４時間タヤセバ２４時間トイウコトデス。ソンナ、トテモトテモ遠イ国カラ、何故ニッポンニヤッテ来タノカ、気ニナリマスカ？ア～デモ、コンナ理由デ、ニッポンニヤッテ来タノハ、私グライダト思イマス。ドンナ理由カッテ？ソレハ、「オルトガル」デ、ニッポンノアニメヲ見タカラデス」

　　　　一呼吸置いて話を続ける。

ジナン「アニメト言ッテモ、普通ノアニメデハアリマセン。私ガ見タノハ、和菓子ノ兄弟ノ歌。アレハ良イ！素晴ラシイ！串ニ刺ササレテモ、ソース塗ラレテモ、兄弟想イ。ケンカシテモ、何ノ脈略モナク仲直リ！兄弟ハ、ソウデナクテハイケナイ。私ニハ兄弟居ナイケドネ」
　　　　上手から若者が、新聞を持ってやってくる。
　　　　一人で喋るジナンを見て足を止める。

ジナン「デモ私ハ、ソノ歌カラ、トテモトテモ素敵ナコトヲ教ワリマシタ。ソレガ、私ノ、仕事ノ流儀デス」

　　　　明転。

若者　「何やってんの？」
ジナン「オ～！＿＿＿（名前）！今丁度、密着取材ガ来タ時ノ、予行練習ヲシテイマシタ」
若者　「密着取材？お前に取材なんて来るわけないだろ」
ジナン「ナンデデスカ？」
若者　「お前がニートだからだよ！」
ジナン「ニート？私ハ、ジナンデスヨ！」
若者　「名前じゃねーよ！仕事してないだろって言ってんの！」
ジナン「仕事ハシテナイヨ！」
若者　「しろよ！お前がこの部屋に来て、もう三ヶ月だぞ」

　　　　ジナン、何かを思い出すように話し出す。

ジナン「ソウ、アレハ三ヶ月前ノ雪ノ日ダッタ……」
若者　「晴れてたよ」
ジナン「コノ、アパートノ前デ倒レテイタ私ヲ、＿＿＿ガ助ケテクレタ。ソレカラ毎日、私ノコトヲ、甲斐甲斐シク世話シテクレル」
若者　「甲斐甲斐しくってなんだよ」
ジナン「骨身ヲ惜シマズ、ッテ意味ダ」
若者　「なんでそんな言葉知ってんだよ。そもそも、腹減って動けないって言うから飯食わせたら、そのまま勝手に住み着いたんだろ？」
ジナン「感謝シテモイイゾ？」
若者　「なんで俺が感謝すんだよ」
ジナン「サビシイ、男ノ一人暮ラシヨリ、私ト二人暮ラシ！楽シイダロ！」
若者　「楽しくねーよ！もう、そろそろ自分の国に帰ってくれよ……」

　　　　若者は憂鬱そうに溜息を吐き、新聞を床に置き座り込む。
　　　　新聞を取りにくるジナン。

ジナン「オ～！ナンテ事ダ！」
若者　「なんだ？なんか事件でもあったのか？」
ジナン「イヤ、私、日本語読メナイカラ、新聞見テモ意味ナカッタ！」
若者　「じゃあなんで見たんだよ！」

　　　　ジナン、分厚いマンガ雑誌を手に取る。

ジナン「ア～デモ、新聞ハ読メナクテモ、マンガ雑誌ハ大好キ！」
若者　「なんで？」

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