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3番窓口のみだれ髪の方

『３番窓口のみだれ髪の方』
　
登場人物：
・野々宮（女、２６）─日夜市《ひよし》役所職員。
・井口（男、２６）─日夜市役所職員。
・お滝（女、２４）─市役所に相談に訪れた、髪の長い女性。
・配達員（男、１９）─ピザ屋の配達員。実家が寺。

＊必要に応じ《よみがな》を振っている箇所がございます。

○日夜市役所・市民相談窓口の受付

　　　中規模自治体の市役所にある市民相談窓口。
　　　舞台中央に受付カウンターが置かれている。
　　　カウンターの両側に、相談者用・職員用の椅子が置かれている。
　　　お滝、椅子に座って泣いている。
　　　野々宮、カウンターを挟みお滝の前に座っている。

野々宮　　えーと…滝さん、でお間違いなかったでしょうか？
お滝　　　ううっ、ヒック…
野々宮　　申し訳ありませんが、その…
　　　　　確認のため、もう一度お話を伺ってもよろしいでしょうか。

　　　明転。

お滝　　　私だけって、言ったのに…他の女に歌を詠むなんて、あんまりだわ…！
野々宮　　それは…大変でしたね。
お滝　　　息子もまだ小さいのに、こんな…こんな仕打ち、許せない…！
野々宮　　──かしこまりました。そういうことでしたら、
　　　　　きっと滝さんのお力になれると思います。
お滝　　　うう、うっ、うっ…
野々宮　　…資料を用意してまいりますので、どうぞこちらでお待ちください。
お滝　　　どうして、どうしてあんな女に、歌を…
野々宮　　…あの…（ティッシュを差し出す）こちらも、よろしければ。
　　　　　どうかお一人で悩まないでくださいね。

　　　お滝、ティッシュを受け取らず泣き続ける。

野々宮　　…では、少々失礼いたします。

　　　野々宮、立ち上がり下手側へ向かい、途中ため息をつく。　
　　　井口、下手側から入場。

井口　　　待った待った待ったー！
野々宮　　後にしてもらえる？井口さんに構っている場合じゃないの。
井口　　　もうバッチリ見てたよ！いやー野々宮さんがんばってるねー！
野々宮　　なら少しは手伝ってほしいものね。ただでさえこの時期は業務が増えるのに…
井口　　　だから来たんじゃん！
野々宮　　あら、そうなの？珍しい。
井口　　　野々宮さんさ、今あの人に何渡そうとしてる？
野々宮　　何って、離婚テラスと精神科の案内よ。問題あるかしら。
井口　　　いやもう大ありだよ！
野々宮　　は？
井口　　　だってさ！あれがただの離婚希望者に見えますかっていう話じゃん！
野々宮　　あれだなんて言わないで、大切な市民の方よ。
井口　　　髪ボッサボサで腰まであるし、話もいまいち要領得ないし？
　　　　　絶対なんかおかしいって！
野々宮　　それは…旦那さんに裏切られたことがショックで、

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