インビジブルの蠢動
殺し屋シリーズ2部:12話
とある日の昼下がり。
カフェ「フラッパー」、店内。
カウンター席でしみじみとコーヒーとサンドを口にする一人の男。
店主の女性がカップを磨いている。
ウィリアム:……うん、美味しい。
ルージュ:ふふ、改まって言うこと?
ウィリアム:いや、またこうして君のコーヒーを飲めることの感動を噛み締めてるんだ。
ルージュ:お得意様を一人逃すことにならなくてよかったわ。
苦笑し、再びコーヒーを口にするウィリアム。
ウィリアム:あんなヤマは二度とゴメンだ。
ウィリアム:裏で小間使いをしてる方がまだ気楽だよ。
ルージュ:ご苦労さま。
ルージュ:今は後始末に奔走してるってところ?
ウィリアム:ああ、やっと一段落したんでね。君の顔を見に来た。
ルージュ:あら、ブロマイドでもあげましょうか?
ウィリアム:いや、動いてる方がいいな。
ウィリアム:個人主演の映画にしてくれ。毎日観る。
ルージュ:あははっ。
からからと笑うルージュ。
その様子を眺め、ウィリアムも微笑む。
二人のやり取りをカウンターに突っ伏しながら横目で見る女性が大きなため息をつく。
ベレッタ:ハァーーー……。
ベレッタ:おかしいなぁ……おかしいなぁ。
ベレッタ:私、ブラック頼んだハズなんスけどねぇ。
ベレッタ:あれ、甘いなぁコレ?
ベレッタ:甘々のカフェオレッスよ、姉さんコレ。
ルージュ:ゲームのやり過ぎで味覚がおかしくなったんじゃないの?
ベレッタ:んんッ、塩対応ォ。
ウィリアム:せっかく良い雰囲気だったのに邪魔しないでくれよ、不運(アンラック)。
ベレッタ:ふんっ、どこで何しようと私の勝手でしょ!
ウィリアム:ずっと浮かない顔だが何かあったのかい?
ベレッタ:聞いてくれますゥ!?
ベレッタ:もー、こんだけどんよりオーラ出してるのに姉さん全然構ってくれないんだもんなぁ!
ルージュ:あのねぇ、カウンセラーじゃないのよ私は。
ウィリアム:まぁまぁ……。
ウィリアム:見たところ仕事が失敗続きで新規の依頼もなく、ゲームも買えずにナーバスな気持ちになり……。
ウィリアム:馴染みの店で話を聞いてもらおうと思ったらよくわからん男がすでに店主と談笑していて、余計にみじめになった……と言ったところか?
ベレッタ:え……? エスパーの人ッスか?
ウィリアム:はは、探偵にでもなろうかな。
ルージュ:それで務まるのなら私でも始められそうだわ。
ベレッタ:うう……お兄さんのおっしゃる通りで……。
ベレッタ:こないだのシノギでセンチピードさんにボコボコにやられて……腕の怪我は悪化するわ、視力戻るのに時間かかるわで、もー仕事どころじゃなくってですね。
ベレッタ:やっと治ったと思ったら全然依頼来ないし……。
ベレッタ:ゲームのひとつも買えない始末ッスよ! どう思いますコレ!?
ベレッタ:「トリガーハッピー」の新作出たのにィィ!
ルージュ:これに懲りたら仕事は選びなさい。
ベレッタ:はいィ……。
ウィリアム:だが確かに妙な静けさだな。
ウィリアム:表はともかく裏の情勢はもっとゴタつくかと思っていたが。
ルージュ:さすがに事件直後はゴタついてたけどね。
ルージュ:今は割と落ち着いてるわよ。
ウィリアム:何かあったのかな?
ルージュ:あなた、探り方が上手くなったわね。
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