コンチェルトの歯車
殺し屋シリーズ2部:5話
 都心からはやや離れた場所に位置するモダンなカフェ。
 店の名前は「フラッパー」。
 「情報屋」としての顔も持つそこは、裏社会に生きる客の出入りも多い。

 静かな店内には落ち着いたBGMにそぐわない派手な電子音が鳴り響く。
 ゲームの対戦をする二人を腕組みして眺めている店主。

ルージュ:……あのさぁ。

 片側の客が画面に目を落としたまま口を開く。

ベレッタ:すいません、もーちょいッス。
ベレッタ:もーちょいで終わりますから。
ルージュ:……。

 店主が肩をすくめ、頬杖をつく。
 やがてバトルに決着がつく。

ベレッタ:ッかぁー! 駄目かぁ!
ベレッタ:惜しいなぁ! もーホント、紙一重ッス!
ベレッタ:あー惜しかった!

 呆れた顔を向ける対戦相手の女性。

センチピード:今のが紙一重? 節穴みたいね。
センチピード:話にならないわ。出直してきなさい。
ベレッタ:ぐゥッ……。わ、私としてはですね、これまでで一番惜しかった気がするんス。
センチピード:そうなの? ごめんなさい、蟻と同じ目線で物事を見るのって難しくて。
ベレッタ:うむむむ……さすが師匠、この強者っぷり……。
ベレッタ:おみそれしたッス。
ルージュ:やっと終わった?
ベレッタ:いやァ、ルージュ姉さん。私の戦いに……。
ルージュ:終わりはないのよね。
ルージュ:素直に尊敬するわ、その熱意には。
ルージュ:はい、コーヒー。

 テーブルに二人分のコーヒーを置くルージュ。

ベレッタ:ありがとうございます!
センチピード:ありがと。
センチピード:雰囲気変わったわね、お店。
ルージュ:ああ、ムカデちゃんは初めてだっけ? リニューアルしてから来たのって。
センチピード:ええ。シックで良い感じね……。落ち着くわ。
ベレッタ:ね! ゲームするには持ってこいの環境ッスよね。
ルージュ:あなたにその辺りの審美眼は期待してないわよ、ベレッタちゃん。
ルージュ:ああ、今は「ベル」ちゃんだっけ?
ベレッタ:へっ? ベル?
ルージュ:この間、一生懸命偽名考えてたでしょ。
ベレッタ:……あ、そうだったッス! 
ベレッタ:そうそう、「ベルトリオ」ファミリーの下っ端、ベルッス!
センチピード:随分と可愛らしい名前にしたわね。マフィアの組員なんでしょ?
ベレッタ:ちょい聞いてくださいよォ。
ベレッタ:雰囲気出すためにサングラス買ったのに、ソッコー壊れちゃって……。
ベレッタ:気に入ってたのに、ツいてないなぁもう。
センチピード:壊されたのがサングラスだけで良かったじゃない。
センチピード:ああ、腕もやったんだっけ?
ベレッタ:そッス。ほら、これ。

 左腕に巻かれた包帯を見せるベレッタ。

1/8

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム