銀河鉄道の夜
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
銀河鉄道の夜
~わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ~
原作:宮沢賢治「銀河鉄道の夜」第三次稿
構成:髙梨辰也
【登場人物】
ジョバンニ
カムパネルラ
宮沢
鳥捕り / ザネリ
青年 / チュンセ
少女 / ポウセ
修道女 / 先生
車掌 / 用務員
幕が上がる。
うす暗い舞台の上に、ジョバンニとカムパネルラのシルエット。
ジョバンニ カムパネルラ、ぼくたちもうずいぶん遠くまで来たね。このまま、どこまでもどこまでも一緒に行こう。ぼくはもうあのさそりのように、本当にみんなのさいわいのためなら、ぼくの体なんか百ぺん焼いてもかまわない。
カムパネルラ うん。ぼくだってそうだ。
ジョバンニ けれどもほんとうのさいわいって一体何だろう。
カムパネルラ ぼくにもわからない。
ジョバンニ ぼくたち、しっかりやろうね。
カムパネルラ あ、あそこ石炭袋だ。そらの孔(あな)だよ。
ジョバンニ ぼくもうあんな大きな闇の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいを探しに行く。
カムパネルラ ああ、きっと行くよ。
ジョバンニ ぼくたちいっしょに行こうね。
ジョバンニがふり向くと、カムパネルラはいなくなっている。
ジョバンニ あれ?……カムパネルラ、カムパネルラ!
チャイムの音。
いっぺんに午後の授業の場面になる。
ジョバンニはいねむりをしていたようだ。
先生 ジョバンニさん、ジョバンニさん。
ジョバンニ あれ、
先生 大丈夫ですか。
子どもたち、ジョバンニを笑う。
先生 少しつかれているんじゃありませんか。
ザネリ お前、さっきねごと言ってたぜ。ウケる。
チュンセ ジョバンニ、きのうも遅くまで仕事だったの。
ポウセ ジョバンニ、おっかさんの分まではたらいて、えらいね。
ザネリ 家がビンボーだからだろ。
チュンセ・ポウセ ザネリ!
先生 ザネリさん。ジョバンニさんは、病気のお母さんのためにいっしょうけんめいはたらいているのですから、そんなことを言ってはいけません。さあ、授業にもどりますよ。
ジョバンニ (お客さんに説明するように)「銀河鉄道の夜」というおはなしは、午後の授業で、ぼくがともだちにからかわれる場面からはじまるんだ。いつもはカムパネルラがとなりにいて、ぼくがからかわれていると助けてくれるのだけど、目がさめたら、カムパネルラはいなくなっていた。
先生 教科書の74ページ。開きましたか。ケンタウルス祭の夜、学校でいじめられた男の子が、町はずれの丘の上で空をあおいでいると、とつぜんそこが駅になって、銀河鉄道という汽車に乗ったという場面です。
ジョバンニ (お客さんに説明するように)そう、その男の子というのがぼく、ジョバンニで、このおはなしを書いたのは、宮沢賢治(みやざわけんじ)先生だ。
ザネリ まぢパネエ、超スペクタクルファンタジーじゃん。エモいわー。
チュンセ ザネリ、それどこの言葉?
ポウセ それから、どうなるの。
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