花がため息している
花がため息している
松永 恭昭
登場人物
見る男
女子高生
撃つ男
冬の終わり、アパートの屋上。
海パンにヘルメット(白地に黄色の一本ラインが入ったもの)を被った男(以下:見る男)が、双眼鏡を覗いている。
時折、銃声が聞こえ、見る男が「イタイ、イタイ」等とぶつぶつ言いっている。
花束を持ったセーラー服姿の女(以下:女子高生)が立っている。
女子高生 あの、
見る男 女子高生だ。
女子高生 はい、女子高生です。
見る男 こんにちわ。
女子高生 こんにちわ。
見る男 花を持ってる。
女子高生 はい、花の女子高生です。
見る男 花は嫌いです。
女子高生 ごめんなさい。
女子高生、花束を後ろへ投げ捨てる。
見る男、再び覗くことに集中する。
女子高生 あの、
見る男 ん?
女子高生 なにしてるんですか。
見る男 なにをしてるか?
女子高生 はい。何をしているんですか。
見る男 見ている。うん、見ています。
女子高生 見てる?
見る男 そう。これでね、こうやって。
女子高生 見てる。
見る男 見てみるかい。ほら、あそこ。
女子高生 いいんですか。
女子高生、見る男から双眼鏡を受取り、覗いてみる。
女子高生 こっち?
見る男 そうだね。
女子高生 男の人がいます。
見る男 うん、いるんだよ。
女子高生 銃を持ってます。
見る男 うん、銃を持っているんだよ。
女子高生 こっちにむけて、あ、
銃声。
見る男、女子高生の前に立ち、銃弾を受け止める。
見る男 イタイ、イタイなぁ。
女子高生 わ、撃ってきた。
見る男 そうなんだよ、撃ってくるんだよ。大変なんだよねぇ、イタイイタイ。
女子高生 大丈夫ですか。今、当たってましたけど。
見る男 うん、怪我はね、してないんだけど、イタイ。
女子高生 いや、イタイんじゃ、
見る男 心が、ね。ふふふ、イタイなぁ。
見る男、女子高生から双眼鏡を受取り、再び覗き始める。
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