聖なる堕天使「GODHELL」
Episode1「舞い降りた漆黒の翼」
Episode1 「舞い降りた漆黒の翼」

   そこはとある街の路地裏
   雰囲気はこの世界の米国
   しかしこの世界とは似て非なる世界である
   時間は深夜
   人影のない通りに一人の男がやってくる
   男はペペと呼ばれている
   ぺぺ、ゆっくりと語り始める

ペペ   俺がそいつと初めて会ったのは、まだ少し寒さが残る春の夜。その日、そいつは俺の前に現れた、何の前触れもなく、だ。おっと、自己紹介が遅れちまったな。俺の名前は「ペペロンチーノ・ペロペッティ」気の知れた奴らからは「ペペ」と呼ばれている。この辺り一帯を仕切っている小粋なギャング「パスタ・ザ・スパゲッティ」の一員さ。主な仕事は売人の統括だ。売人たちの縄張り争いが起きないようにバランスを取るのが俺の役目って訳だ。何事もバランスが大切だからな。パスタも焦らず、それでいて茹ですぎちゃダメだ。アルデンテを心がけるのさ。バランスがアルデンテにならない時は勿論不味いパスタが出来上がる。売人たちも同じさ。奴ら、血の気が多くていけねえ、今日も売人同士の喧嘩に巻き込まれてこの様さ。
大丈夫なのかって?おいおい、俺を誰だと思ってるんだ?危険は承知の上さ。何しろ上等なブツを扱ってるからな、ウチのシマは。一度味わったらおしまいさ、みんなジャンキーになっちまって、有り金全部使っちまう奴も少なくねえ。何だ?あんたも味わってみたいのか。ヘイヘイ、怖いもの知らずな奴だ。ほら、持っていきな、ウチのホットドッグだ。(ポケットからホットドッグを取り出して渡す)うん?クスリじゃないのかって?おいおい、バカ言っちゃいけないぜ。クスリは犯罪だぜ?ダメ、絶対。俺たちは殴り合いだってしない、クリーンなギャングさ。これか?これはケチャップさ。奴ら怒るとケチャップを飛ばしてくるのさ。スペインのトマト祭りか何かと勘違いしてるのさ。Hahahahaha!
まあ、そんな事はいいか。ここからが本題だ。その日、俺はそいつに出会ったんだ。夜道、俺は集金を終えて家に帰る途中だった。

   ペペ、歩く
   その手には携帯電話、誰かと話をしている

ペペ   (通話相手に)へい、カルロス。調子はどうだ?タバスコをかけ忘れたピッツァの様な気分だって?それを言うなら、冷たくなったパンにソーセージを挟んだ気分だろう。冷たいのにホットドッグだってな。Hahahahaha!
ところでマイカルボナーラ?この所売り上げが落ちてるみたいだけど、どうしたんだ?・・・常連客が減った?味は変わってないはずだろ?・・・姿そのものを見かけなくなった?どういうことだ、そいつは・・・うん?

   その時ペペ、隅にうずくまっている人影を見つける

ペペ   何だ?酔っ払いか?・・・いや、こっちの話だ。人がうずくまっててな。おい、あんた大丈夫か?・・・うん?噂?人がいなくなる?なんだそりゃ?おい、あんた立てるか。大丈夫か・・・?

   声を掛けた人影が振り向くと、その顔は馬だった

ペペ   うわっ!ビックリした。何だあんたそんなの被って。まだハロウィンには気が早いぜ。この俺「ぺぺロンチーノ・ペロペッティ」を「パスタ・ザ・スパゲッティ」だと知ってて脅かしてるのか?いい度胸だ、その被り物の下に隠れた顔を見せてもらおうか。

   ペペ、男の馬を取ろうとする
   しかし、その馬の部分は外れない

ペペ   あれ?おかしいな、取れないぞ。おい、どうなってるんだ、これは。あんたまさか、接着剤でくっつけてるのか?おいおい、こんなクレイジーな奴は初めて見たぜ。まるで、ホットドッグにマヨネーズだ。

   馬、何かを伝えようとしている

ペペ   うん?どうした?何か言いたいみたいだな。ちょっと待ってろ?ああ、分かった。

   馬、一度後ろに下がり、パネルの様なものを持ってくる
   そこには馬の台詞が描いてある

ペペ   (電話に)ヘイ、カルロス。すまないな、何か変な奴に絡まれちまってな。ああ、大丈夫だ。大したことは無いさ。すぐに終わる。パスタを茹でるよりも簡単さ。(馬の準備が終わり)なになに?・・・わたしは神の使い。墜落した・・・あ、堕落?堕落した人間共を滅ぼす。貴様にも裁きを・・・これは・・・つまり・・・ミートスパよりもジェノベーゼが好きだって事なのか?

   馬、否定する
   そしておもむろに血の付いたナイフを取り出す

ペペ   それは・・・あんたホットドッグ食べてたのか。でも、ホットドッグは切って食べちゃダメだ。こうやって手づかみで食べるから美味いのさ。そして指に着いたケチャップを舐めるのが最高さ。

   馬、ペペにナイフで斬りかかってくる
   ぺぺ、よける

ペペ   おいおい、危ないぜ。ヘイ、クレイジーなマカロニ野郎。食べ方一つでそんなにムキになるなんて大人げないぜ。いいか、そいつを大人しくしまうんだ。

   しかし馬は従う気配はない

ペペ   どうしてもやろうっていうのか、マカロニ野郎。あんまり俺を怒らせるなよ。「パスタ・ザ・スパゲッティ」に牙をむくと痛い目を見ることになるぜ。この俺のデルモンテでな。

   ペペが取り出したのはただのケチャップだった
   馬、それを取り上げ捨てる、そしてペペを斬りつける

ペペ   あ、俺のデルモンテが・・・いてぇ!やりやがったなこの野郎。畜生、もうただじゃおかねえ。
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