月桂樹の孤独
『月桂樹の孤独』


ローラ:月桂樹。花:裏切り。葉:私は死ぬまで変わりません
村の裕福な家の娘。
無邪気で愛らしい。

モニカ:唯一の、孤独な
貧乏な家の娘。
落ち着いている。頭脳明晰。



【第一場】
  暗転
モニカ 「ローラが死んだ!?嘘…嘘だ!だって、そんな…ああ…嘘だと言ってくれ…!私のローラ…!」

  ●丘の上
明転
樹の下で本を読んでいるモニカ。
  上手より紙袋を抱いてローラが登場。
  
ローラ 「あら、ここにいたのねモニカ。探したわ」
モニカ 「ん?(本から目線を上げローラに気付く)ああ。ローラか。どうかした?何か私に用?」
ローラ 「用とういう程ではないのだけど、おいしいりんごが手に入ったのよ。だからモニカと食べようと思って」
モニカ 「ありがとう」
ローラ 「何を読んでいるの?」
モニカ 「『若きウェルテルの悩み』」
ローラ 「まあ、ゲーテの」
モニカ 「そう」
ローラ 「その話、私大好きなの。とても切なくて、最初に読んだ時は思わず涙したわ。でも、あなたがそういった話を読むなんて珍しいのね。…失恋でもした?」
モニカ 「主人公ウェルテルを真似て自殺する若者が急増し、当時の社会現象になったと聞いて興味を持ったのさ」
ローラ 「くすくす、あなたらしいわね」
モニカ 「だってすごいじゃないか。文字だけの虚構の世界に思いを重ねて自分の命すらも投げ出してしまう人がいるなんて。しかもそれが1人2人じゃない」
ローラ 「そう言われてみればそうね。それであなたは、その本を読んで共感したのかしら」
モニカ 「それがサッパリ。読めば読むほど理解に苦しむね。…ローラはこの本のどこに魅力を感じたの?」
ローラ 「そうね。やっぱり私はウェルテルに感情移入したわ。」
モニカ 「私もウェルテルには同情するよ。婚約者のいる女性を好きになってしまうなんて、とんだ悲劇さ。でも、叶わぬ恋なら捨ててしまえば良かったのに。」
ローラ 「恋心はそう簡単に捨てられるようなものじゃないわ。叶わぬ恋と知っていても、いくらやめたいと思っても、自分の意志で手放せるようなものではないの」
モニカ 「その言い方だとローラも経験した事がありそうだね。叶わぬ恋」
ローラ 「それは…」

  ローラ、モニカを見つめた後言いよどみ視線を落とす。
  そこに、ローラの学友が現れる。

友声1 「あ、ローラ発見!」
友声2 「これから皆で街に布を買いに行くのよ。一緒に行きましょ」

ローラ 「え?でも私」
モニカ 「いいよ。私の事は気にしないで行っておいで」
ローラ 「じゃあモニカも一緒に行きましょうよ」
モニカ 「行かないよ。あの子達も私が来る事なんて望んでないだろうし」
ローラ 「そんな事」
モニカ 「ほら、私の事は良いから皆と街に行っておいで」

  モニカに背中を押されるローラ。

ローラ 「(立ち上がると学友に向けて声を掛ける)ごめんね、今日はちょっといけないわ。また今度ご一緒させて?」

  モニカの隣に座りなおすローラ
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