ぬいぐるぐるみ

ぬいぐるぐるみ

キャスト

ぬいぐるみ(中身は持ち主)

持ち主(中身はぬいぐるみ)

舞台は持ち主の部屋。中央に椅子が置いてあり、その上にはぬいぐるみが置いてある。
下手側にはベッドが置いてある。


持ち主M:目が覚めたら、嫌な仕事が片付いていたとか。休日に戻っていたとか。
    どうせ叶わないと分かっていても夢を見てしまう。
    本来なら願っても無理なことだ。
    しかし、その現実的でないことが今この身に起きている。
    そう、俺は……。

明転

持ち主:朝、起きたらぬいぐるみになっていた。
   最初は金縛りにあっているのかと思った。
   体が動かない理由なんて、そのくらいしか思い浮かばないし。
   しかし、いくら経っても動かない。おかしい、さすがにこれはおかしい。
   そして、俺は目の前にあった鏡を見て驚いた。
   ふわふわのボディ、つぶらな瞳。この愛くるしい姿。
   間違いない。これは昔、俺が大事にしていたぬいぐるみだ。
   ど、どうなってるんだー!?
   
ぬいぐるみ、登場

ぬいぐるみ:起きたー?

持ち主:俺が……、動いている?

ぬいぐるみ:うん、今は君の姿を借りてるんだ。自由に動けるって良いね。
      
持ち主:えっと、どういうこと?

ぬいぐるみ:付喪神って聞いたことない? 物に宿る神様のことなんだけど。
      僕はそれなんだよね。

持ち主:もちろん聞いたことある。長い間、大切にしていると宿るって。

ぬいぐるみ:そうそう。本来だったら夢に出てきたりとか、実際に動いて会話したりとか。
      そういうのでも良かったんだけど、神様に体を交換してもらえるように頼んだんだよね。
      それで君はぬいぐるみの姿になって、僕は君の姿になっているっていうわけ。
      
持ち主:何のために?

ぬいぐるみ:当たり前だよ。文句を言うためだよ。

持ち主:当たり前なの?!

ぬいぐるみ:何? 大事にしてくれてありがとうって言ってもらいたかった?
      そういうのを期待していた?

持ち主:そうではないと言ったら嘘になるけれど……。

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