夏の魔物
「夏の魔物」
キャスト
木曽ひろむ
石田りん
今井とき子
幕
音響 スピッツ「夏の魔物」小島麻由美カバー
照明 「夏っぽい照明」FI
古いアパートの二階。間取りは六畳の和室とキッチンの1K。ちゃぶ台で木曽はひとり片づけをしている。周りには段ボールが点在しており、近々、引っ越すようだ。片付けの最中、何かを思い出したように、ぼーっとしてしまう。
音響、スピッツ「夏の魔物」小島麻由美カバー FO
下手から石田が入ってくる。
石田 おーい。ちょっと、ひろ君。
木曽 ああ、ごめん。
石田 もう、またぼっとして。大丈夫?
木曽 ああ、ごめんね。
石田 いいけど、あと三日だよ。
木曽 わかってる。大丈夫。
石田 そう?そんなこと言っても、待ってくれないんだから。業者さん。
木曽 うん。とき子は大丈夫なの?
石田 何が?
木曽 いや、引っ越しの準備。
石田 もうあらかた済んでるから。
木曽 そうなんだ。
石田 結構大変だったんだから。だって25年も住んでたのよ。まー、物がいっぱいで。
木曽 実家だもんね。でも、部屋は残るんでしょ?
石田 うん。一応残しとくって。お父さんが。なんか縁起悪い気もするけど。
木曽 なんで?
石田 だって、戻れるってことでしょ?
木曽 どういうこと?
石田 だから、その、もし、もしだよ、私たちが別れちゃっても、大丈夫みたいな。
木曽 そういうことか。
石田 なんか縁起悪いっていうか。
木曽 大丈夫だよ。俺たちは。
石田 そうだといいな。うまくいくかなー。
木曽 俺もちゃんと荷造りしなきゃ。
石田 その意気です。ていうか、何年住んだの?
木曽 7年くらいかな。
石田 長いね。
木曽 上京した時からだからさ。
石田 じゃあ、感謝しないとね。
木曽 部屋に?
石田 そうそう。大学からお世話になってるんだし。
木曽 そうだね。ちゃんと片付けないとね。
石田 うん。でもさ、いまどき和室って、珍しいよね。
木曽 好きなんだよ。畳が。この手触りとか、匂いとかさ。
石田 知ってる。だから、和室ある物件探し大変だったね。
木曽 ごめんね。
石田 うううん。私も好きだから畳。同棲するところも気に入ってるよ。
木曽 よかった。やっぱりうまくいくよ。俺たち。
石田 そうだといいんだけど。ひろ君が浮気しなければね。
木曽 ないない。それはないって。
石田 またー。
木曽 俺の性格分かってるでしょ。
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