脚本ダウンロードサービス

ギムレット

登場人物
柏木拓(かしわぎたく)･･････バーの客。幼馴染との待ち合わせで早くにやってきてしまった。
明石朝音(あかしともね)･･････一人でよく飲んでいるバーの常連。

（バーの扉が開く。拓がお店に入ってくる）
拓　　ちょっと早く着き過ぎたな。あれ？マスター？
朝音　今買い出しに出ていっちゃったところ。
拓　　あ。ありがとうございます。
朝音　･･････（手元にあるギムレットを飲む）
拓　　ギムレット･･････
朝音　そうだけど･･････何か？
拓　　あ、すみません。口に出ちゃってたみたいで。
朝音　気にしてないから大丈夫。
拓　　確か、「長いお別れ」「遠い人を想う」･･････でしたっけ。
朝音　カクテル言葉、お詳しいんですね。
拓　　前にマスターに教えてもらって。自分でも調べるようになりました。
朝音　あなたもだけど、マスターも好きだよね、カクテル言葉が。
拓　　「カクテル言葉には使い所があるんだよ」なんていうくせに自分はしょっちゅう使ってる。
朝音　たしかに。あれでカッコつけてるつもりなんだろうけど、自分が多用し過ぎてるから全くカッコがついてない。
拓　　それは言えてる。
朝音　ふふ。
拓　　･･････隣、いいですか。友人と待ち合わせしてるんですけど早く着き過ぎちゃって。
朝音　時間潰しの相手にはぴったりってことね。
拓　　あ、いや。そんなつもりじゃ。
朝音　冗談ですよ。ごめんなさい。どうぞ。
拓　　失礼します。

拓　　このお店にはよく来るんですか？
朝音　うん。人生初めての行きつけのお店。
拓　　なるほど。それはいいですね。
朝音　あなたは･･････初めてじゃないでしょ？マスターを知ってるんだから。
拓　　ここにくるのは数えるほどで。普段そんなに外で飲まないので。
朝音　ふーん。でもここには来るんだ。
拓　　友人のお気に入りの店なんです。彼はしょっちゅうきてるから、もしかしたら知ってるかも。
朝音　そういえば･･････お名前聞いても？
拓　　柏木拓です。あなたは･･････？
朝音　明石朝音です。
拓　　朝音さん。いいお名前ですね。
朝音　ありがとう。
拓　　ギムレット、お好きなんですか？
朝音　ううん。同じライムのお酒ならモスコミュールの方が好きかな。
拓　　じゃあどうして？
朝音　･･････今は、モスコミュールは飲めないの。悲しい思い出を思い出しちゃうから。
拓　　･･････
朝音　「長いお別れ」「遠い人を想う」
拓　　え？
朝音　どちらにしても彼女のことを思い出しちゃうわけか。
拓　　･･････何かあったんですか？
朝音　･･････
拓　　すみません、ちょっと出過ぎたことを言いました。
朝音　･･････ううん。気にしないで。なんだかんだカクテル言葉に縛られちゃうんだよね。
拓　　ここのマスターのせいかな。
朝音　本当にそう。
拓　　･･････
朝音　友達とね、喧嘩しちゃったの。
拓　　はあ。
朝音　ちょっとしたことだったんだけどね。私が思いっきり相手に怒っちゃって。
拓　　うん。

1/3

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで！