機械兵士と魔女
ラディアン:「……おはよう」
ヴィゴ:〈……戦闘機械兵士V5型。起動しました。主人(マスター)〉
ラディアン:「…私はマスターじゃない」
ヴィゴ:〈わたしの起動には鍵が必要。わたしを目覚めさせたならば鍵を持つマスターと認識〉
ラディアン:「私は貴方の鍵を持ってる。けど、私は、貴方と…友達になりたいの」
ヴィゴ:〈理解不能。わたしは戦闘機械兵士。そのようなことをお望みならば家庭用機械・ロゼをお勧めいたします。わたしの製造された目的は、人間を侵略する魔女の排除。貴女様の期待には添えません〉
ラディアン:「貴方の眠ってる間に、戦争は終わったよ」
ヴィゴ:〈なら兵士は廃棄される。起動する意味がない〉
ラディアン:「あるよ。戦争は終わった。魔女が負けて、人間の勝ち。力のほとんどを失った魔女は、……いつかゴミみたいにどこかで死ぬ。そして要らなくなった機械兵士も、廃棄されていく。でも、私は死ぬ前にね、ひとつだけやりたいことがあるの」
ヴィゴ:〈………やりたいこと?〉
ラディアン:「そう。誰かと友達になりたい。でも世界中どこを捜しても、魔女の友達になりたい人なんかいない。でも機械兵士さん……私と同じ、世界に要らなくなった貴方なら…友達になれると思ったの」
ヴィゴ:〈……理解不能〉
ラディアン:「そうだね。でも、付き合って。貴方が廃棄される前に目覚めさせたお礼に」
ヴィゴ:〈鍵を持つ者には逆らえない。マスター。貴女の望み通りに〉
ラディアン:「…ラディアンって呼んでほしいな。わたしは貴方をヴィゴって呼ぶよ」
ヴィゴ:〈……。ラディアン〉
ラディアン:「ふふ、ありがとう。ヴィゴ」
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ヴィゴ:〈それで、ラディアン。貴女は、何処に向かっているのですか?〉
ラディアン:「目的地があるって、よくわかったね」
ヴィゴ:〈貴女の歩き方には迷いがない。さ迷っているようには見えなかったので〉
ラディアン:「隠してた訳じゃないけど。私に付き合わせてしまうから言いづらくて…ごめんね」
ヴィゴ:〈では、やはり目的地があるのですね〉
ラディアン:「うん。私はね……最期の戦いで奪われた私の心臓を取り返したいの」
ヴィゴ:〈心臓?〉
ラディアン:「そう。私の心臓は、魔力の源。力のほとんどを失ったのも、心臓を奪われてしまったから。人間達が私の心臓をどうしたいのかはわからない。わからないけど、好き勝手にされるのは、いやだから……取り返したいの」
ヴィゴ:〈生きていられるはずがない〉
ラディアン:「魔女はね、心臓を切り離されたくらいじゃ死なないの。それこそ跡形のないくらい、木っ端微塵にでもしない限りは」
ヴィゴ:〈………つまり、わたしを目覚めさせたのはそれを手伝わせる為の兵器としてですか〉
ラディアン:「違うよ」
ヴィゴ:〈……〉
ラディアン:「それは違う。ヴィゴ、私は心臓を取り返したいと思っているけど、貴方に手伝わせようとか、武器になって欲しいなんて思ってない」
ヴィゴ:〈貴女についていくのなら同じことです。ラディアン〉
ラディアン:「ついてきて欲しいけど、貴方がそれで壊れたりするくらいなら、逃げてって言うよ。守ってくれなんて私は言わない」
ヴィゴ:〈なぜ?〉
ラディアン:「壊れてほしくないから」
ヴィゴ:〈………敵であったわたしに、どうしてそんな感情が抱けるのですか?〉
ラディアン:「ヴィゴはわたしに武器を向けたことなんてないでしょう」
ヴィゴ:〈機械兵士に個などない。わたしの同型機が貴女に武器を向けたはずです。ならそれはわたしが向けたも同じ〉
ラディアン:「違う。貴方は……ヴィゴだもの」
ヴィゴ:〈………理解不能……〉
ラディアン:「そうだね。でも。でも、いつか、解るよ。わかってくれるよ。私は……そう信じてる」
ヴィゴ:〈……〉
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ヴィゴ:〈………該当なし……〉
ラディアン:「…ん。…ヴィゴ…?何してるの…?」
ヴィゴ:〈起こしてしまいましたか〉
ラディアン:「大丈夫……。何か言ってた?」
ヴィゴ:〈貴女の心臓が奪われたという話について。本部のメインコンピューターにアクセスし、調べていました。結果は該当なし。貴女の話は本当なのですか〉
ラディアン:「……。信じられないなら、胸の音聞いてみる?何も聞こえないよ。…多分、一部の人間が極秘に手に入れたがったんだと思う。それなら、兵士じゃわからないよ」
ヴィゴ:〈……理解不能〉
ラディアン:「なにが?」
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