恋するナインライブス
0:♯1
0:鬼気迫る様子で自作の漫画を描いている優李。
0:やがて、原稿が完成する。
0:意気揚々と原稿が掲げられる。
優李:よぉっし、完成だ!
優李:うんうん、今回こそはイケる気がする。
優李:斬新な切り口ながらも、勧善懲悪で爽快なストーリー展開。
優李:悲しい過去を背負った主人公。
優李:健気で可愛いヒロイン。
優李:連載を意識した壮大な締め括り!
優李:……完璧だ。
優李:集大成と言っても過言じゃない。
優李:この作品に、我が漫画人生の全てをかけるッ!
0:後日。
0:意気消沈と歩く優李の姿がある。
優李:……なんて思っていた時期が、僕にもありました。
優李:ああ、今回も駄目だった。
優李:ボツだ。ボツ、ボツ。圧倒的ボツ。
優李:何がいけなかったんだろう……。
優李:落ち度はなかったと思うんだけどなぁ。
優李:あの編集の見る目がないんじゃないのか!
優李:何だよ、僕の顔見る度にあからさまにメンドくさそうな顔しやがって。
優李:昔は、結構協力的だっただろ……。
優李:くそっ、おかしいよ……。
0:うなだれながら街の通りを歩いていく。
0:遠くで、猫の鳴き声が聞こえる。
優李:もうやだなぁ。
優李:どうすりゃよかったんだよ……。
優李:才能ないのなんてわかってるって。
優李:遠まわしに言いやがって、ムカつく……。
0:猫の鳴き声が近くなってくる。
優李:大体、どこが悪いのかはっきり言ってくれないと、わかんないだろ!
優李:何だよ、「全体的に話が薄い」ってさぁ!
優李:何がどう薄いのかわかるように説明しろってんだよォ!
0:猫が優李の行く前に姿を現す。
優李:って、うわ!?
優李:……ね、猫、か。
優李:野良、だよな?
優李:いやになつっこいなぁ。
0:優李の足元を歩き回り、何度も鳴く猫。
優李:……お腹すいてるのか?
優李:ごめん、何も持ってないよ。
優李:他をあたって。
0:その場を離れようとする優李。
0:猫はその後をぴったりとついていく。
優李:ついてくるなって、もう。
優李:ウチに来たって無駄だよ。
優李:何もないし、そもそもペット禁止なんだから。
0:優李に訴えかけるように鳴き続ける猫。
優李:……はぁ。
0:根負けして立ち止まり、屈んで猫の顔を見る。
優李:しつこいな、君は。
優李:そんな必死になっても、何もないってば。ね?
0:猫の顔をまじまじと見る優李。
0:やがて、苦笑する。
優李:……あんまり良い思い出、ないんだよなぁ。
0:軽やかに優李の肩に飛び乗る猫。
優李:うわっ! おい、何、人の肩に……。
0:その弾みで携帯電話が落ちる。
0:すかさず猫が携帯電話を咥え、逃げていく。
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