どらまてぃっく・くらいしす!
どらまてぃっく・くらいしす!
   
   【あらすじ】
   八月三十日。夏休みが残り一日になったことに全国の学生が悲しみに明け暮れるこの日、この世界では別の絶望が空を覆っていた…。
   約三か月前から予測されていた巨大隕石の衝突がついにこの夜に迫ったのだ。
   とある高校の演劇部の部室には、文化祭に向けての稽古をするはずだった演劇部メンバーが浮かない顔をして集まっていた……。
   
   【登場人物】
   田中:三年男子。お調子者。一年の時に演じた役が「田中」で以降そう呼ばれている。本名:岩田鉄平(いわたてっぺい)。
   
   部長:三年男子。演劇部部長。一際演劇に熱い男。この状況を受け入れきれてな
   い。本名:水口勇人(みずぐちはやと)。
   
   松姉:三年女子。二年の時に入部した。男子たちのやりとりを冷たい目で見る。
   本名:松風沙也加(まつかぜさやか)。
   
   おはじき:二年男子。合宿参加届と間違えて小学校の算数で使うおはじきセットを持ってきてあだ名になった。性格はあまりよくないかも。
   本名:木本大介(きもとだいすけ)。
   
   りっ君:二年男子。勉強は苦手だが、脚本を書きたくて入部した。今年の文化祭でやる予定だった台本を選んだ。本名:氷室凛久(ひむろりく)。
   
   ベンチ:バレーボール部と兼部してる奴。でもずっとベンチで暇なので演劇部に来ている一年生男子。実は演技が苦手で都合が悪くなるとバレーボール部を理由に逃げる。が、逃げ切れない。本名:火上玲央(かがみれお)。
   
   杏璃:一年女子。文芸部。なぜか演劇部室にやってきた。
   本名:土井杏璃(どいあんり)。
   
   先生:演劇部顧問だが演劇のことはよく知らない。一生懸命な現代文の先生。仕事はちゃんとやるが、仕事は嫌い。本名:山岡桜子(やまおかさくらこ)。
   大体の流れ
   
    
   【シーン① 絶望と最期の希望】
   
    中央に机と椅子、下手側に色々な小道具が詰まった箱。机の上にも物が散乱している。
    
    舞台上には、部長・松姉・おはじき・りっ君・ベンチの五人がそれぞれ座ったりだらけたりしている。皆絶望に満ちた顔。
   
    セミの鳴き声。
    下手から田中登場。
   
   田中   …お疲れ様でえす!!!
   五人   ……(ため息)。
   田中   …おいおい~。揃いも揃って浮かない顔しちゃって~! 明日で夏休みが最終日だからって落ち込みすぎなんじゃないの~? よお、りっ君! 宿題は終わったか?
   りっ君  …終わってませんけど
   田中   おいおい間に合うのかぁ?
   松姉   アンタ、本気で言ってんのそれ?
   田中   松姉は今日もクールだねぇ~
   おはじき ていうか夏休み明日で終わりなんですね
   田中   そうだぞ、おはじき! 二学期の足音がすぐそこまで! 席替えだよ? 修学旅行だよ? 文化祭だよ? 楽しみが山積みで…
   ベンチ  二学期がいつも通り始まるなら、そうっスけどね…
   田中   うお、ベンチもいたのか。何だよもう~みんな沈みすぎだよ~。ねえ部長もなんとか言ってやってよ
   
    部長、立ち上がり舞台手前で、カーテン・窓を開ける動作。
    暗くなる照明、轟音。
   
   部長   今から三か月前、地球に巨大隕石の接近が報告された。すぐに地球との衝突の確立は低いだろうという専門家の予測を大いに裏切り、地球に向かって飛び続けた隕石は、世界各国から編成された連合軍のミサイル攻撃もものともせず、ついに今夜、地球に到達しようとしている。そして隕石とは対照的に行く当ても目的も見失った俺たち演劇部は、今こうしてやれることもなく地球滅亡の瞬間を部室で待っているのさ
   田中   …はぁ…ご丁寧な説明どうも、部長。
   部長   どういたしまして。
    
   部長、窓を閉める動作
   
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