探偵三井は殺させない(5人版)
<登場人物>
大林:男性。人気漫画家。現在『探偵三井の名推理』という推理ものの連載を持っている。
この作品のヒットでついた異名は『伏線回収の大林』
編集者:20代女性。担当編集者・丸山。まだ若いのに大林や編集長から全幅の信頼を得ている。
実は伏線回収を考えるのはだいたい丸山
三井:男性。『探偵三井の名推理』主人公。
ダーヤス:男性。『探偵三井の名推理』の登場人物で探偵三井の宿敵という設定。
三井2:男性。ストーリー上、必要な三井の分身
編集長:最後にちょっとだけ登場。セリフは無いので、三井・三井2・ダーヤスとの兼ね役で。
(人物の性別については、セリフを調整して変更可)
<設定>
舞台の上は漫画家・大林の自宅。
漫画を再現できるスペースも確保してください。
<本編>
〇 現実・大林の自宅
自分の作業机に突っ伏している大林。
編集者、大林の部屋に入ってくる。
編集者:(入りながら)先生、急に呼び出したりして……
(大林に気付く)……どうしました!? え、死んでる?
大林:(泣きそうな顔で)勝手に殺さないで
編集者:なんで、そんなに泣きそうな顔なんですか。
大林:今日打ち合わせなのに、まだ何もできてない……
編集者:(安堵)そんなの、いつものことじゃないですか~先生、筆が乗ってきたらあっという間に描いちゃうでしょ?
大林:……今週の、見てないの?
編集者:あっ、そういえば。実はまだ職場復帰してなくて、家からここに来たんです。
大林:じゃあ。(原稿を取って渡す。)これ読んでみて
編集者:ありがとうございます。拝見します。
解決編が終わって、この回からまた新しい事件が始まるんでしたよね。
……あっ、今回は探偵三井の永遠のライバル、怪盗ダーヤスを出したんですね。
……ふむ、第一話から直接対決があり……
(読み終わって、少し考えてから)……あの。最後のページで三井、殺されたんですけど
大林:(泣きそうになり)どうしよう
編集者:どうしようじゃないですよ!主人公の探偵が殺されたらダメでしょ!
大林:いや、殺すつもりはもちろんなかったんだけど、もののはずみで
編集者:本当の殺人者みたいな言い訳してどうするんですか……
えっ、先週、私の代わりに来た担当はこの展開に何も言わなかったんですか?
大林:編集長
編集者:編集長か……あの人、今週が面白ければ何でもいい人だからな……
大林:ちょっとお酒が入って盛り上がっちゃって、気づいたらこんなことに
編集者:そんな簡単に人を殺さないでくださいよ……
大林:いや、事件編の第一話だから誰かは殺さなきゃならなかったんだよ
編集者:(怒る)それが分かってても探偵を選ばないでしょ!普通!
誰がこの事件を解決してくれるっていうんですか!
これなら余白に『長らくのご愛読ありがとうございました。大林先生の次回作にご期待ください』って書かれても仕方ない内容ですよ!
まあ、ここまでハッキリと主人公が死んで打ち切りなんて聞いたことないですけど!
大林:そんなに本気で怒ると体にさわるよ?
編集者:(お腹を押さえて)ぐ…傷口が…私が盲腸で入院したばっかりに……
大林:それで、今週どうしても君の協力が絶対に必要だと気付いたわけで。
何とかしてもらえる?いつものように。
編集者:(お腹をさすりながら)いや……いつもは、事件編で先生の自由な発想で無駄なものまでいろいろ書いて、最後に使えそうなものを総動員して解決する、という流れでしたので……
大林:今回は過去にも出してるライバルだから、今までの伏線で使ってないものも駆使したら、なんとかなりそうな気が……?
編集者:しないです。だってその推理をする頭脳明晰の探偵が死んでますもん
大林:そこを一発逆転で、実は死んでないという展開にできそうな気も……?
編集者:しないです。最後のコマでダラダラ血を流してるじゃないですか
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