割り勘裁判
割り勘裁判
作 宝井 直人         
登場人物:
『被告人(村田)』
『検察官』
『弁護人』
『証人A(原告:渡辺の友人)』
『証人B(被告:村田の友人 池上)』
『裁判官』
『傍聴人』(何人でも可能、できれば複数人いると望ましい)

以下本文

検察官    被告人の犯行は極めて悪質であり、非人道的と言わざる負えません。よって  我々検察は被告人に対し極刑を望みます。

弁護人   異議あり!検察の主張は客観的事実を欠いたものであり不当です。検察側に証人尋問および当事者尋問を要求します。

裁判官  弁護人、その異議を認める。検察官。

検察官    はい。ではよろしくお願いします。あなたは、原告の渡辺さんとはどのような関係ですか?

証人A  大学からの友人です。

検察官  あなたは、8月6日の夜、何をしていましたか?

証人A  渡辺達と一緒に、新宿の居酒屋で食事をしていました。

検察官  なぜそこで食事をしていたのですか?

証人A  渡辺に誘われて、合コンに行くことになったんです。

検察官  その中に被告人はいましたか?

証人A  はい。

検察官  その時のことを覚えていますか?

証人A  はい。あの時も、いつものように楽しい時間を過ごしていました。話しも盛り上がり、いい時間となりましたので、とりあえず一軒目はお会計しようという話になりました。でも、その時

検察官  その時、何がありましたか?

証人A  被告人が私たち女性に対して信じられない言葉を浴びせてきたんです。

検察官  被告人はなんと言いましたか?

証人A  「女性陣は一人2千円でいいかな」と言ってきました。

傍聴人  酷い!なんて奴だ!

裁判官  静粛に

検察官  つまり、被告人は女性陣に対し「金銭」を要求してきた。そういうことですね?

証人A  はい。

検察官  その時、どのようなお気持ちでしたか?

証人A  あんなおぞましい体験、今でも忘れません。この男は、私達を、私達の人生全てを踏みにじったんです。私たち女性は男と違って、多くの場面でお金がかかります。出かける時は必ず化粧をし、美容院に行ってパーマをかけたり、マニキュアしたり、可愛い喫茶店で可愛い食事の写真を撮ったり、脱毛サロンにも行かなきゃいけないんです。私たち女性には、男たちが想像もできないような時間とお金がかかるんです。その上、男が同席している時に食事代まで要求されたら・・そんなことされたら、わたし、私たちはどうやって生きていけばいいんですか?私は・・・私達女は死んでもいいって言うんですか。

検察官  皆さん、お聞きになったでしょうか。彼女たちは、被告人が放った悪意に満ちた一言により、人としての尊厳を踏みにじられ、深く心を傷つけられたのです。被告人は残虐非道な犯行を行ったにも関わらず、自身は無罪だと主張する始末。ここは法定、言葉は慎重に選び咀嚼しなければなりません。しかし、被告人に対してあえて言いましょう。カスであると!
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