脚本ダウンロードサービス

アンビグラム

アンビグラム

はるちゃん
おりちゃん

海の見える場所。
雲一つない晴天。遠くに見える水平線。

鉄棒に足を掛けてぶら下がっているジャージ姿のはるちゃん。
その傍らには、びしょ濡れの制服が鉄棒に引っ掛けて干されている。
そこにやってくるのは同じくジャージ姿のおりちゃん。
手には濡れた制服を持っている。

おりちゃん　はるちゃん。はるちゃん、何してるの？
はるちゃん　こうやって見るとさ、海は空だね
おりちゃん　え？
はるちゃん　ほら、さかさまになって見ると、まるで海は空だし、空は海みたいに見える。それに水平線で分かれてはいるけど、海も空も同じ海だよ
おりちゃん　でも、海が青いのと、空が青いのは理由が少し違うんだって
はるちゃん　そうなの？おりちゃんは賢いなあ
おりちゃん　違うよ。このあいだ先生が言ってたから。私も本当はよくわかってないよ
はるちゃん　でも、おりちゃんのおかげで私もひとつ賢くなったよ

鉄棒から降りるはるちゃん。

はるちゃん　それ、干しておこう
おりちゃん　あ、うん

おりちゃんから制服を受け取ると、鉄棒に干す。

はるちゃん　おりちゃん、ごめんね
おりちゃん　え？
はるちゃん　私、昔から空気読めないみたいでさ。きっとまた余計なこと言っちゃったんだよね
おりちゃん　ううん。大丈夫だよ
はるちゃん　これ、こんなに天気がいいからすぐに乾くよ
おりちゃん　それならよかった
はるちゃん　あー、おなかすいたね
おりちゃん　あ、じゃあ私、何か買ってこようか？
はるちゃん　ううん、いいよ
おりちゃん　そっか
はるちゃん　あのあと、大丈夫だった？
おりちゃん　うん、なんともないよ
はるちゃん　嫌なこととか言われてない？
おりちゃん　大丈夫だよ。むしろ、はるちゃんは大丈夫だった？
はるちゃん　私は全然
おりちゃん　ごめんね。関係ないのに巻き込んじゃって
はるちゃん　違うって。私が勝手に頭を突っ込んだの。だから私はどうなろうと大丈夫
おりちゃん　でも、悪いよ
はるちゃん　悪くない。もしも、また何かされるようなことあったら私に言うんだよ
おりちゃん　その心配は必要ないよ。きっと、もう私は仲間に入れてもらえないし

そう言って、笑うおりちゃん。

1/3

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで！