箱入り姫と大泥棒と最強騎士
【登場人物】
ルビィ……マトカリア王国の魔術を使う家系に生まれたお姫様。力を持つ宝石を守っている。
ジュール……大陸全土で指名手配されている大泥棒。宝石を狙ってマトカリアにやってきたが、ルビィに惚れ、どうにかして自分のものにしようと日々城を訪れている。
マリーヌ……マトカリア最強と言われている女騎士。王の命によりルビィの護衛をしている。
マルクス……王の兄であり、ルビィの叔父。普段は世界中を旅していて、たまにルビィのところへやってくる。
召使い……マトカリア王国に使える召使い。







ルビィ  『その昔、我がマトリカリア王国に住む神の子が、興味本位で、自身の力を石へと注ぎ、美しい宝石を作った。神の子の力は強大なもので、その美しい宝石もまた、世界を征服できるほどの力を持った。その宝石をめぐり、王国では争いが起こった。皆、世界を我が物にしたかったのだ。そこに現れた救世主が我が先祖。元々神だった我が先祖は全ての力を込め、宝石の力を封印した。それと同時に我が一族は地上へ降り立ち、現代まで宝石の力が再び復活せぬよう、悪しきものに渡らぬよう、守り続けている。』
ジュール で、お姫様は最近その宝石を受け継いで、ずっと守っていると。それにしたって城の中だけでの生活は退屈じゃないか?
ルビィ  ほんとそうなの!もう退屈すぎて死んじゃいそう。
ジュール だから俺と一緒にこの部屋から抜け出そうぜって、何度も言ってるじゃん。
ルビィ  いや、私だってお城から抜け出して街に行ってショッピングとか、おしゃれなカフェでパンケーキとか食べたいよ?だけどさ……
マリーヌ また出たのか、このドブネズミが!
ジュール げ?もう来たのかよ。
ルビィ  今日は早いねー。
マリーヌ ルビィ様、こんなコソドロとは付き合うなって何度も口すっぱくして言ってるじゃないですか。
ルビィ  そう言われても、ジュールったら毎回毎回窓の外から侵入してくるんだもん。
ジュール そりゃ、俺様は天下の大泥棒様だからな。ていうかマリーヌ、俺様をそこら辺のコソドロと一緒にするんじゃねぇ。
マリーヌ そうか、私に文句があるのか。ならばその口今すぐに塞いでやろうか。
ジュール 待て待て。剣を納めろ。王国一最強剣士さんに正面から挑むほど、俺もバカじゃねえよ。
マリーヌ だったら今すぐこの場を去れ。二度とルビィ様にちょっかいを出すな。
ジュール はいはい、今すぐ去りますよ。ただし、お姫様は諦めないからね。またくるよ、俺のお姫様。(ルビィの手にキス)
ルビィ  (窓から出て行くジュールに向かって)“俺の”は余計よ。全く。
マリーヌ ルビィ様、あんなドブネズミはもう相手にしないでください。あいつはあれでも犯罪者なんですよ。
ルビィ  わかってるわよ。でも退屈すぎるんだもん。ジュールの話はすごく面白いし。退屈しのぎにはもってこいなんだもん。
マリーヌ あいつはあなたの持っている宝石とあなたを狙っているんですよ。指輪もルビィ様もいなくなったとなれば国民が心配します。
ルビィ  大丈夫よ。いざとなったらマリーヌがすぐに駆けつけて守ってくれるでしょ?
マリーヌ 全く、能天気なお姫様だ。それより、今日は叔父様が隣国からやってきます。ご挨拶しに行きましょう。
ルビィ  そうだったわ。叔父様!私叔父様のお話大好きなの。今日はどんなお土産話を持ってきてくださったのかしら。急ぎましょう!
 
ジュール 『当初、俺様は世界の全てを手に入れる宝石が欲しくて城へと乗り込んだ。しかし、俺様はルビィ姫に出会った。彼女は俺の運命の人だ。なんとしてでも彼女を手に入れてやる。そんな風に思って、俺も懲りずに城へと忍び込んだとき、俺はあることを盗み聞いてしまった。』

ジュール (ルビィの部屋のドアを急いで開けて)大変だ、お姫様の命を狙っている奴がいる!
マリーヌ このドブネズミ!堂々と部屋のドアから侵入してくるとはいい度胸じゃないか!
ジュール おい、今はそんなこと言ってる場合じゃないんだって!
マリーヌ コソドロの言うことなんて誰が信じるというんだ。そう言ってルビィ様を連れ去るつもりなんだろう!
ルビィ  まぁまぁ、落ち着いてマリーヌ。一応話を聞きましょう。
マリーヌ しかしルビィ様……
ルビィ  私の命がかかっていることかもしれないから。嘘か本当かは話を聞いてからでもいいんじゃない?
マリーヌ むむむ……
ジュール 俺、城の廊下でたまたま聞いてしまったんだ。姫様を暗殺するとかなんとか言っている輩たちの話を。
ルビィ  城の廊下ってことは、私を殺そうとしているのは身内だってこと?
マリーヌ 城に仕えているものたちは皆信用のおけるものたちだけを雇っています。そんな奴がいるはずありません。
ジュール わからねぇよ?俺様にしょっちゅう侵入されているんだ。変装してれば案外紛れられると思うぜ?
マリーヌ 直ちに城の防犯を固めろ。このドブネズミも閉め出せ!
ルビィ  マリーヌ落ち着いて!今はジュールの話を聞こう?
マリーヌ ルビィ様はこんな泥棒の話を信じるのですか?
ルビィ  宝石を取ろうとしてるならまだしも、私のことではジュールは嘘つかないもの。
ジュール お、わかってるね。俺のお姫様。
ルビィ  だから“俺の”は余計よ。
マリーヌ しかし証拠がありません。私には城のものよりもこんな奴のことを信じることの方が難しい。
召使い  ルビィ様、マリーヌ様大変です!
マリーヌ どうした?慌てて。
召使い  ルビィ様の昼食をご用意していたところなのですが、毒見役が姫様のお料理を口にした途端倒れてしまって……
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