シマシマ
シマシマ

峰内武光(みねうちたけみつ)作

二〇二〇年一月二〇日 初稿
二〇二〇年八月〇七日 二稿
二〇二〇年八月一七日 三稿
二〇二〇年八月二一日 四稿

登場する人物
本田文 ほんだ・あや  姉
本田栞 ほんだ・しおり 妹
死神  しにがみ
本田優 ほんだ・ゆう  母
本田勝 ほんだ・まさる 父

一場
★    地明かり+単サス(生)
    緞帳が上がると、中央に机がある。下手奥に階段と平台があり、袖幕3の奥につながっている。
    ブラウスとスカート姿の女子高生・文が、何やら鼻歌を歌いながら机に向かっている。

文    で〜きた!

    文は書き上げた書類を顔の前に掲げて読む。紙の裏側には「遺書」の文字。

文    「先立つ不幸をお許しください」・・・ありきたりね。いい書き出しないかなあ。

    優、上手に現れて、階下から声をかける。

優    文、何やってんの?ご飯よ!
文    今日のおかず、何?
優    パクチー餃子とカレースープと揚げバナナ、あとお赤飯よ。
文    バランス悪!・・・デザートは?
優    マルカワのオレンジガム!あんたの部屋から持って来て!
文    こんなデカいの買うから、もう半月くらいずっとじゃん!

    文、巨大なオレンジガムを出す。

優    お父さんの大好物なの。
文    自分が死ぬ前に、あいつらの息の根止めておくか。・・・ちょっと待って!
優    お父さんも待ってるから、早く降りてくるのよ。
文    わかったよ。

    優、上手に捌ける。

文    ・・・「恥の多い生涯を送って来ました」は、カタいなあ。

    スウェット姿の栞が下手奥の平台に現れて、階段に座って文に話しかける。

栞    「愛の前に死がかくも無力なものだとは」は?
文    何言ってんのよ、栞。私、今まで彼氏いたことないじゃん。
栞    そっか。お姉ちゃんは彼氏いない歴イコール年齢だもんね。
文    うるさい!何しに来たのよ?
栞    ちょっと様子を見に、ね。
文    「将来に対するぼんやりとした不安。」・・・不安はぼんやりとしてないんだよな。
栞    どういうこと?
文    この前の試験で赤点取って、推薦がパー!・・・って、まだ親に言ってない。
栞    そりゃ、超具体的だね。
文    あ?もう!どうしよう・・・。どうやったら死ねるのかなあ?
栞    そりゃ、色々あるけどね。首吊る?
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