カメオン
カメオン

峰内武光・作

二〇二〇年一一月十六日 第一稿
二〇二一年〇六月二九日 第二稿
                                                   
登場する人物
 優男  お父さん・四二歳
 菜々  娘・十二歳
 希   謎のお婆ちゃん
 菜央  ママ
 菜々の分身

登場しない人物
 菜央の再婚相手
 春日部の叔母さん
 式場の係員(声のみ)

プロローグ

☆    緞帳が上がると、結婚式の音楽が流れる。
★   舞台上手奥に単サス。
    そこにはドレス姿の菜央。

菜央   愛していたはずなのに、急に醒めてしまうことってありませんか?

    下手前に単サス、そこには背広姿の優男。

優男   カッコつけすぎたなって思うこと、ありませんか?
菜央   今まで愛していた人が幻のように消えて、同じ顔をした別人がいる。それはその人が変わったのでしょうか、それとも私が変わったのでしょうか?
優男   その時はいいんだけど、だんだん恥ずかしくなったりして。それだけならいいんだけど、そのうち引っ込みがつかなくなっちゃったりしてね。
菜央   私にはどっちなのかわからないけれど、愛しているふりをしてやり過ごすのは耐えられないんです。だってキッパリ別れるよりも、もっと残酷なことですよね?
優男   僕は安請け合いの王様っていうか、ええカッコしいで、つい、できもしないことを言っちゃうんです。正確にはその瞬間は思っていても、後でコロッと忘れちゃうんです。

★     地明かり。
    二人がゆっくりと向き合う。とてつもない心の距離が二人を隔てている。

優男   お、おめでとう。その、末長くお幸せに。
菜央   本気?
優男   ・・・え?
菜央   本気で言ってるの、って訊いてるの。
優男   ・・・もちろん。月並みなセリフだったかな?
菜央   何を言ってもテンプレな人。
優男   かもね。でも、二人で出せなかった答えは、今度出会える君の知らない誰かと、見つけてみせるから。
菜央   テンプレじゃなきゃ、パクリ。
優男   やめようよ、そうやって僕たちは・・・。
菜央   ここまで来ちゃったんだよね。
優男   え?
菜央   私は今日結婚するの。あなたのせいで、二回目のウェディングドレス。
優男   僕・・・だけのせい?
菜央   そう、昨日までなら何とかなったのに。
優男   なってないよ、とっくの昔に別れたんだから。
菜央   それってちょっとひどいんじゃない?
優男   ごめん。
声    新婦様、新郎様のご準備ができました。よろしいですか?
菜央   ・・・(ため息をついて)行くね。

    菜央、上手に捌ける。下手から菜々が出て来る。

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