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羊飼いの証言

【登場人物】
○メリー………♀　羊飼い。本作の主人公。恋人であるローレンスの無実を証明するため証言台に立つ純真な少女。
《議会》
○イージス……♂　村の自警団団長。元兵士で、メリーの父親。剣の腕が立ち、村の守り手として魔族と長年闘ってきた。
○ヴィクトル…♂　村長であり独裁者。村を守るため厳しい掟を作り、人狼の疑いをかけられたローレンスを裁くための議会を開いた。
○ヘキム………♀　薬師。村で唯一医学に長けている存在である。人前で話すことが苦手で、議会でもオドオドしている。
○バセット……♂　狩人。長年野生動物や人狼と関わってきた猟師。村を襲う人狼に対し強い憎しみを持っている。
○ラパ…………♀　聖協会の修道女。魔族と相反する立場の聖職者として、議会に召集された信心深い女。
○フック………♂　村の豪商である酒造会社の御曹司。いつも酔っぱらっており自由奔放な性格だが、発言は的を射ている。
《被告》
○ローレンス…♂　人狼の疑いをかけられている青年。宿屋の馬番をしており、真面目な性格。メリーとは幼馴染である。
《証人》
○ペドロ………♂　村の大道芸人。事件の目撃者である。人を楽しませるためか、口から出る言葉は軽薄で信用性に欠ける。
○カーミラ……♀　廃教会に住まう吸血女。百年以上生きており、魔族代表として議会に参加するヴァンパイア。

【本編】
夜中、とある小さな村の講堂。平穏な村とは思えないほど物々しい雰囲気であった。
集められた者たちはザワザワと話し込んでいる。
奥の大きな椅子に腰かける村長・ヴィクトルがガベルを打ち鳴らす。

ヴィクトル　静粛に。皆、静粛に頼む。本日この場に集まってもらったのは、この村の存続にかかわることを皆に考えてもらいたかったからだ

　各々口を閉じ、席に座る出席者。

ヴィクトル　全員の出席を確認する。自警団団長・イージス
イージス　　ハッ
ヴィクトル　薬師のヘキム
ヘキム　　　あ、は、はい！
ヴィクトル　狩人を代表して、バセット
バセット　　おぅ
ヴィクトル　聖教会のシスター・ラパ
ラパ　　　　御前に
ヴィクトル　最後にレザン酒造会社の社長、フォスター氏

　返事をする者はいない。

ヴィクトル　フォスター氏は？　来ておらんのか
ヘキム　　　ほ、ほら、何かと忙しい人ですから…ははは
ラパ　　　　誰か呼びに向かわせましょうか
バセット　　大事な話なんだろ！　来ないやつは放っておいて、早く始めようぜ！
ヴィクトル　バセットの言うとおりだ。我々に猶予は残されていない
ヘキム　　　そんなに重大な話なんですか？
ラパ　　　　バセットさんは知っているようですが、一体何のお話ですの？
ヴィクトル　静粛に。溢れ出る疑問や憶測を投げかけあう時間はない。一番重要な問題に目を向けるのだ。皆の意見を聞かせてくれ。…イージス
イージス　　はい

　イージスは、鎖につながれた傷だらけの青年・ローレンスを連れてくる。

ヴィクトル　こやつは人狼であるか。それとも人間であるか

　皆の視線がローレンスに集まる。

バセット　　あの眼を見ろ！　あいつは人狼だ！　そうに決まってる！
ローレンス　違う！　僕は人間だ！　人狼なんかじゃない！
ヴィクトル　お前に発言の権利はない。口を閉じろ
ヘキム　　　あ、あの、し…失礼ですが、議長
ヴィクトル　どうしたね、ヘキム
ヘキム　　　わ、私の眼には、その…人間にしか見えない、というか…あれ、私の眼がおかしいのかな…
バセット　　水を差すんじゃねぇよ！　薬屋！

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