ドラゴンとお茶会の日
演劇教室発表会「ドラゴンとお茶会の日」


ナレーション この物語の舞台は、とある王国のとあるお城。名前はトアール王国と言うことにしておきましょう。ここトアール王国は、代々トアール王家のトアール国王が治め、平和に暮らしていました現在の国王、トアール七世は心優しい王様で、多くの国民から慕われていました。そしてトアール七世の奥様、トアール王妃も穏やかな性格でトアール七世同様、国民から慕われていました。さらに、トアール七世の息子、トアール王子もトアール王家始まって以来の心優しい性格の持ち主で、誰よりも国民に愛されていました。優しい王家に、優しい国民たち、トアール王国はとても平和な王国でしたが、ある日トアール城で事件が起こったのです。

   トアール城にはトアール王妃と大臣がいる

王妃  ああ、どうしましょう、どうしましょう。
大臣  困りましたな、ああ困りました。
王妃  大臣、どうしたらいいと思いますか?
大臣  弱ってしまいました。王妃の方がいいアイデアが思いつくのでは?
王妃  そんな私なんかは、大臣の考えの足元にも及びませんわ。
大臣  なんとお優しいお言葉。この大臣、なんとか考えてみましょう。
王妃  お願いします。でも、無理をしすぎないでね。あなたまで倒れてしまっては大変。
大臣  なんとお優しいお言葉。では、ほどほどに考えてみましょう。
王妃  ほどほどってどのくらい?頑張ってるの?サボってるの?
大臣  ほどほどは、ほどほどです。
王妃  なるほど、ほどほどはほどほど、ね。さすがは大臣、賢いわ。
大臣  恐縮です。

   そこへトアール王子が慌てた様子でやってくる

王子  母上、大臣、何かいいアイデアは思いつきましたか?
大臣  これはこれは、トアール王子。
王妃  王子、城内は走ってはいけないといつも言われているでしょう。転んで怪我でもしたらどうするの?みんなが心配してしまうわよ。
王子  母上、すいません、つい。では、もう一度部屋から歩き直してきます。
王妃  そうね、それがいいわ。右側通行で、曲がり角は直角に曲がるのよ。城の者には笑顔で挨拶をすること。
王子  もちろんです、母上。では(と行こうとするが)
大臣  お待ちください、王子。とても感心なことですが、今はそんなやり直しをしている場合ではありません。
王子  確かに、そう言われればそうだ。さすがは大臣だ、賢いね。
大臣  恐縮です。
王妃  私もつい気が動転していたようね。ありがとう大臣。
大臣  恐縮です。
王子  それで、二人とも。いなくなった父上、トアール七世は見つかりましたか?
大臣  それが・・・。
王妃  まだ、何も。
王子  何も?
大臣  ええ、なぜいなくなったのかも、どこへ行ったのかも、いついなくなったのかもさっぱりでして。
王子  そうか。
大臣  ここまでさっぱりだと、もしかして最初からトアール七世は存在しなかったのではないか、と。
王子・王妃 なんだって!?
王子  ・・・それはないだろう。
王妃  王子、人の考えをすぐに否定してはいけません。可能性の問題です。
王子  そんな、もし父上が最初から存在していなかったとしたら、僕は一体誰の息子なのですか?
王妃  たとえあなたが誰の子でも、あなたは私の愛する王子よ。
王子  母上!
大臣  なんと優しくお美しいお二人。
王妃  ところで何の話だったかしら?

   そこへ兵隊が一人やってくる

兵隊  大臣、王妃様、大変です。
王妃  何ですって?大変ですって?
王子  兵隊さんじゃないか。一体どうしたんだ?
兵隊  トアール王子もいらっしゃいましたか、それが一大事なのです。
王妃  一大事ですって?それは一大事だわ。落ち着いて。
大臣  さすがは王妃、冷静でいらっしゃる。そうだ、君、落ち着いて話したまえ。
兵隊  はい。
王妃  待って。どれだけ落ち着いてと言ったところで、一大事は一大事。簡単に落ち着けるはずがないわ。
王子  そう言われれば確かに。さすがは母上、冷静です。
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