酔生夢死
〜役〜
・酒呑童子(しゅてんどうじ)〈男〉
→平安の頃に世間を騒がせた悪鬼。源頼光に退治されたと言われているが、江戸になり再び悪名を轟かせている。熱い性格を内に秘める怠け者。
・あき〈女〉
→大江山の近くの村娘。酒呑童子に関ヶ原の戦いに加勢するように説得しに来た生贄である。素直で律儀な性格。大きな秘密を抱えている。
・拳助(けんすけ)〈男〉
→鎌鼬三兄妹の長男。標的を転ばせる役割のため武闘派。妹たちを溺愛する。
・斬子(きりこ)〈女〉
→鎌鼬三兄妹の長女。標的を斬る役割のため戦闘能力が高い。独身のクールビューティー。
・癒美(ゆみ)〈女〉
→鎌鼬三兄妹の次女。標的に薬を塗る役割のため薬を常備している。癒し系。
・女郎蜘蛛(じょろうぐも)〈どちらでも〉
→大江山の妖で古参の類。大江山を仕切る姐さん的存在。
・治郎吉(じろきち)〈男〉
→関ヶ原の戦いに駆り出された若い百姓。とある一件で西軍を恨む。
・石田三成(いしだみつなり)【九尾】〈男〉
→西軍を操る武将。頭脳明晰だが謀略を好み、非人道的な行動も勝利の為なら厭わない。秀吉亡き後の日本においては“絶対的なリーダー”が必要だと考えている。九尾と契りを結ぶ。
・ねね〈女〉
→秀吉の妻。三成に軟禁されており、そのおかげで秀吉の親族関係は三成に逆らえなくなっている。関ヶ原の戦いを望まず、平和を願っている。
・源頼光(みなもとのよりみつ)〈男〉
→平安時代の武士。大江山の酒呑童子を葬ったと言われている。
・徳川家康(とくがわいえやす)【隠神刑部】〈男〉
→東軍の総大将。天下泰平の為に戦う事を望む。秀吉亡き後の日本においては“日本全体の和”が必要だと考えている。
・源義経(みなもとのよしつね)〈男〉【烏天狗】
→全国を旅している。軽いノリが特徴的。
・島津正久(しまづまさひさ)〈男〉【鬼】
→島津家の武将。ねねのいる京都新城を守る。鬼と武士の喋り方を混同している。
・講談師〈どちらでも〉
→演目「酔生夢死」を語る。数多くのモブも担当する。
・梅〈女〉
→治郎吉の姉。

《開演》

(出囃子の音)
明転
講談師が出てきて舞台端の座布団に座る。

講談師:「(掴みのネタを差し込めると良い)ところで私、何よりお酒が好きなんです。酒を飲むと強くなった気がして気持ちがいい。しかしね、酒は飲んでも呑まれちゃいけない。酔ってる間っていうのはいわば幻みたいなモンですからね、酔生夢死って言葉があるくらいです。これは酒に酔った心地のように死ぬ様を言う言葉なんですがね、現在は何もせず空しく死ぬという意味で伝わっております。しかし皆様には酔生夢死の本当の意味を申し上げましょう。酒に酔い天下を動かしたある武士と妖の夢物語、題目は『酔生夢死』でございます。」

講談師は杓を叩く。

講談師:「『おい、聞いたか!ついに徳川が上杉を攻めるってよ。』『そんな事より大江山の化け物の方がよっぽど考えなきゃいけねぇよ。』『おい、聞こえたらどうすんだよ!』『なぁ、久しぶりに酒でも飲まねぇか?』『冗談はやめとけ、アイツが来るぞ。…全く、天下は上手く治まらんもんかね。』」

講談師は杓を叩く。

講談師:「時は戦国、太閤秀吉の亡き後、天下を統べるは西の石田三成か、はたまた東の徳川家康かの瀬戸際、再び天下人を決めるために全国の大名が動いておりました。彼らは勝つためには人ならざる者の力をも借りました。ここにもまた1人、妖に会おうとする者がいる。」

講談師は掃け、あきが登場。

あき:「本当にこの大江山に酒呑童子はいるのかしら。私が幼い時には昔話として笑われてたけど。」

女郎蜘蛛がブツブツ喋りながら登場。

女郎:「あぁ、分かったよ。酒を持っているんだね、それで……」

あき:「そこのお方。この山に酒呑童子がいるというのは本当ですか?」

女郎蜘蛛は無視して喋り続けている。

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