凍死山
凍死山(いてじにやま)
                    銀城蘇芳

登場人物

雪乃

雪菜

語り部
1.
吹雪と女の子
OP、徐々にF・Oして雪のBGM

雪菜   (歩く息遣い)

語り部   それは、昔々のこと。小さな女の子が吹雪の舞う夜の山を歩いていました。女の子は薄い着物しか着ておらず、雪の寒さに震え、足を懸命に動かしながら歩いていましたが
どこに向かっているのか、もう分からなくなっていました

雪を踏みしめる音(SE

雪菜   はあ……はあ……っ(歩く息遣い)
おかあさん……おかあさん、どこ……?

語り部   今日、女の子はお母さんと山菜採りに来ていました。久しぶりにお母さんとお出かけできるのが嬉しくて、女の子は一生懸命に摘みました。
気づいたら、お母さんはどこにもいませんでした。 女の子はお母さんを捜し歩きましたが、山菜採りに夢中だったので帰り道すら分かりません。知らないうちに山をどんどん上っていき、いつしか雪の中を進んでいたのでした。

雪菜   いたいよ……あしがうごかないよ……まえがみえないよぅ
おかあさん……おかあさん……?

語り部   真っ暗で何も見えなくなってきた頃、吹雪の中に小さな明かりが見えました。お家の明かりのようですが、こんな山の上に誰かが住んでいるのでしょうか。しかし、意識を朦朧としている女の子には、そこでお母さんが待っているように見えました。足をひきずりながら、女の子はなんとかお家の前までたどり着けました。

戸を叩く音(SE

雪菜   おかあさん、おそくなってごめんなさい。たくさんさんさいとってきたの、だからおこらないで、おかあ、さん……

戸が開く音(SE

語り部   意識を失いながら、女の子は夢を見ました。それはお母さんとの思い出でした。
お母さんはとても冷たい人でした。お父さんが小さい頃にいなくなってからいつも怖い顔をしていて、洗濯やお手伝いが上手くできないと怒り、時には手を上げました。
女の子が見ていたのは、自分がまたお母さんに「どうしてこんなこともできないの」と怒られて「ごめんなさい」と繰り返している夢でした




2. 雪乃
場面が変わり、家の中
優しげなBGM

雪菜   ん……ぅん……(目を覚ます)あれ、おかあさん?
雪乃   おはよう、よく眠れた?
雪菜   えっ?
    えっと、だれ? おかあさんは?
雪乃   私は雪乃。ここに住んでいるの。残念ながら貴方のお母さんではないけれどね
雪菜   このおうちに、ずっとすんでるの?
雪乃   そうよ、それで、貴方は誰? ここにずっと住んでいるけど、お客さんなんて初めてよ?
雪菜   わたしは……えっと……わたしの……なまえ……
雪乃   ちょっと待って、貴方、自分の名前も分からないの?
雪菜   ごめんなさい

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