風を追いかける
登場人物
月野絵奈(17)(21) 女子高生
七瀬柚子(17)(20) 絵奈の同級生
司会者
�@ホテル・表彰式会場
中央に絵奈の姿、客席を向いている。
マイクを持った司会者、絵奈に近寄る。
司会者「それでは、大賞を受賞しました柚野奈々先生にお話を伺いましょう」
絵奈 「えっと……この物語は、私のものではありません」
司会者「?」
絵奈 「あっ、えぇっと、そうじゃなくて……このお話を語る前に、皆さんに聞いてほしい話があります。これは……」
舞台袖に柚子の姿。
柚子 「これは私たち二人の物語」
絵奈 「夢を追いかける、青春舞台」
柚子 「このお話がいつか」
絵奈 「未来を生きるあなたの背中を押す、風になりますように」
�A学校・廊下(夏)
教科書を拾い集めている柚子。
絵奈、柚子の後ろでスマホを見ている。
絵奈 「七瀬さんって小説書いてるの?」
柚子 「え? あっ、それ私の……どうして月野さんが……」
柚子、絵奈からスマホを奪いとる。
絵奈 「ぶつかった時に飛んできたから」
柚子 「だからって勝手に……待って、パスワードは?」
絵奈 「1が六つって簡単すぎじゃない? パスワード変えたら?」
柚子 「普通の人は勝手に開かないから! ……中見た?」
絵奈 「ちょっとだけ。あのサイトなんだっけ? 素人がネットで自分の小説を公開できる……」
柚子、絵奈の口を押さえる。
柚子 「誰にも言わないで。親にバレたら怒られるし、一人でこっこり投稿してるの」
絵奈 「あぁ、確かにね。大学受験だしね、今年。でもじゃあ、私が最初の読者?」
柚子 「え?」
絵奈 「誰も知らないなら、私が最初の読者っことじゃない?」
柚子 「いや、アクセスついてるから読んでくれてる人はいると思うけど……読者になってくれる? 昨日新しいの公開したけど、評判よくなくて。読んで欲しいな、なんて」
絵奈 「いいよ。今日の放課後どう?」
柚子 「え?」
絵奈 「あ、今日塾だった。七時過ぎに終わるから、七時半に学校前の公園集合ね」
柚子 「え? え?」
絵奈 「それと私、ネットで小説読むの好きじゃないから。印刷して持ってきて。じゃあまた夜に」
絵奈、去る。
柚子 「読んでもらえる、私の小説を……印刷、印刷しなきゃ!」
柚子、絵奈と反対の方向へ走り去る。
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