舎人先生の愛しきミステリ
【登場人物】
舎人 次郎(とねり じろう) 人気小説家。通称「殺さないミステリー作家」。最近、スランプ気味。
小鳥遊 深月(たかなし みつき) 舎人の担当編集者。他にも売れっ子小説家を多数担当している。舎人が何とかスランプを脱却出来ないか、模索中。
椎名かなえ(しいな かなえ)舎人家の家政婦。元銀行員で、頭がキレる。いつも優しい微笑みを浮かべているが、どこかミステリアスで訳ありっぽい。
3人の服装はご自由にどうぞ。
舞台→舎人邸の書斎。舎人の作業デスク、休憩用テーブルと2脚の椅子。(配置はお任せします)
作業デスクの上には、原稿や資料の本など。締切の期限が書かれたカレンダーなどあってもいいと思います。
開演
謎解きの雰囲気のある音楽、落ち着いた照明。
舎人 登場。
舎人「やあ、皆さん、ご機嫌よう。僕の名前は舎人次郎。職業は小説家。そ・れ・も!超超売れっ子のミステリー作家さ。」
舎人 舞台を歩きながら台詞を喋る。
舎人「ご存知の通り、これまで文学界では数多くの人気ミステリー作家が誕生し、その作品は時代を超えて愛され続けている。例えば、「そして誰もいなくなった」「オリエント急行の殺人」などを執筆、ミステリーの女王と呼ばれているアガサ・クリスティ、シャーロックホームズシリーズのアーサー・コナン・ドイル。日本だと、名探偵明智小五郎の生みの親である江戸川乱歩、松本清張、最近だと東野圭吾かな。」
舎人「しかし、この舎人次郎を他の物書きと一緒にされては困る。僕は人呼んで「殺さないミステリー作家」。つまり、小説の中では、誰も殺させないし、死なせない。これは作家人生を通して貫いてきた、揺らぐことのない強い信念であり…。」
ドアをノックする音。
小鳥遊の声「とーねーりーせーんーせーーい!?入りますよーー!」
舎人 音のする方を見て、人差し指を口元にあてる。
舎人「しっ!あの頭に響く甲高い声は僕の担当編集者 小鳥遊くんだ。ああ、非常に残念だけどお喋りはここまでだね。まったく彼女といったら、締め切り、締め切り、うるさいんだから…。」
音楽 どんどん小さくなる。 照明 オン。
舎人 作業デスクで原稿を書くフリ。
小鳥遊 登場。
部屋の中を見回して、クンクンと鼻を鳴らす。
小鳥遊「…舎人先生。」
舎人「(顔を上げる)んーー??」
小鳥遊「…..もしかして、さっきまでここに誰かいました?」
舎人「ーーえ?い、ないけど?」
小鳥遊「おかしいなあ。この書斎、いつもカビの匂いするのに、入ってきたとき甘い良い香りがしたんですよ。」
小鳥遊 首を傾げながら休憩用テーブルに着席。
舎人「ちょっと待って?この部屋、ずっとカビ臭かったの?」
小鳥遊「言いづらかったんですけど、….はい。」
舎人「そういうことは早く言ってくれ。やっぱり空気清浄機、買ったほうがいいかな…。」
小鳥遊「家政婦さんを雇っているんですから、一度大掃除してもらえばいいじゃないですか。」
舎人「いやだね。勝手に大切な原稿や資料を変に動かされたりしたら、たまったもんじゃない。それに一見、雑然としているように見えても、きちんと意味があって配置されていてだな……。」
小鳥遊「へー、そうなんですか。(小さな声で)全く頑固なんだから…。」
舎人「なんか言ったか?」
小鳥遊「いいえ、別に?そんなことより!依頼した短編小説の件、きちんと進んでいますよね?」
舎人「もちろん!ご覧の通り、バリバリ書いているよ。」
小鳥遊「それなら、進捗の方を確認させてください。」
舎人「え、無理。」
舎人 原稿を隠そうとする。
小鳥遊「あ、や、し、い。素直に見せてください!あたしは今日、そのために来たんですから!」
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