喫茶・浜木綿の風「ジャングル・ウェディング」
(ボイスドラマ・舞台演劇)
(ラジオドラマ)喫茶・浜木綿の風
「ジャングルウェディング」
作:澤根 孝浩
−登場人物−
・ナレーション
・河原崎美加(36)
・双葉 花 (31)
ナレ:浜松市の片隅にある小さな喫茶店・浜木綿の風。ある火曜の昼下がり、店の扉が開 いた。
(SE)「カランカラン」ドアの音、カットイン。
美加:いらっしゃいませー。あっ!
ナレ:姿を見せたのは、無造作に伸びた髪を後で止めた三十歳ほどの女性であった。手に は大きな革製の旅行鞄、足には泥に汚れたブーツ、日焼けで真っ黒な顔をした彼女 は人なつっこい笑顔を店主の河原崎美加に見せた。
美加:2年振り…ですか? 南米のジャングルに取材に行くとおっしゃってから。
花 :うんと…そうなるかな。
ナレ:そう、彼女は、冒険家であり、女流作家の双葉花である。日本にいる時は、この喫 茶店の常連客である。
美加:どうでした? ジャングルでの生活は。
花 :まぁね。すごかったよ〜。そうだ…。
ナレ:しばらくの間、土産話に花が咲いた。一段落したところで、河原崎美加が双葉花に 尋ねた。
美加:…で、今度はいつから旅に出られるんですか?
花 :うーん、無理な旅は、少し休みになるかな…。
美加:え? 何かあったんですか? お身体でも…。
花 :あーそういうのじゃないんだぁ…。えっとさ…。なんていうか…け…。
美加:け?
花 :け…結婚をさ、することになって…。
美加:結婚ですか! 本当ですか!?
花 :そんなに驚くこと!? 私が結婚するって。
美加:あ、すいません。そういうわけではないんですが、なんというか……ははは……そ うだ、そうだ、おめでとうございます。
花 :いいって。私も自分が結婚するなんて思ってなかったしね。
美加:そうですよねぇ。
花 :えぇ?
美加:あ、あの、お相手は、やっぱり花さんみたいワイルドな方なんですか?
花 :ううん。間違いなくワイルドじゃないね。ひょろひょろだし。この浜松でサラリー マンやってるんだ。
美加:そうですか。ちょっと意外です。
花 :そう? 幼なじみなんだよ。でも、この歳まで性別とか関係なく、接してきたんだ けどね。友達の一人としてさ。
美加:よかったら、教えてください。幼なじみから結婚相手になった経緯を。
花 :こういう話、苦手なんだけど…。まぁ、いいか。美加さんには特別、話しちゃおう。
美加:ありがとうございます。
花 :この前の旅の途中でさ、ジャングルで高熱出して、倒れちゃったんだ、わたし。
美加:まぁ…。
花 :で、仕方なく街に戻って、ホテルで寝込んでてさ。そうしたら、彼からメールが来 たのよ。悪い夢を見て心配になったからメールしたって。少し驚いたけど、「お前 がそんな夢見たから、こっちは今、高熱でダウン中だ!」って返事したんだ。軽い 気持ちでさ。…そうしたらさ……来たんだ。彼。飛行機で10時間近くかけて、そ こから車でまた何時間もかけて。
美加:すごい。
花 :まぁ、彼が来たときには熱もひいて、すっかり元気になってたんだけどね。着いた ときは、あっちの方が病人みたいな顔してた。
笑う二人。
花 :でも…さ…彼の姿を見たときね、私、知らず知らずのうちに涙を流していたんだ…。 なんで泣いているのか、自分でもわからなかったんだけど、全く止まらなかった…。 それで、思ったんだ。これまでたくさんの国に行って、多くの人に逢ってきたけど、 私の心が求めているのは、この人なんだ…って。この人と生きていきたいって。
美加:ロマンチック…ですね。すごい。まさか花さんからこんな話が聴けるなんて思って ませんでした。
花 :もうこの話は終わり! コーヒー、まだ?
美加:今日はわたしのおごりにさせてください。最高のコーヒー、入れますから。
花 :やった。あ、でも、こんな恥ずかしい話をさせたんだから、大盛りにしてよね。
美加:コーヒーの大盛りですか?
花 :そう、コーヒーの大盛り!
笑い合う二人。
ナレ:河原崎美加役、○○○○、双葉花役、○○○○、脚本、澤根 孝浩、、製作、○○ ○○で、お送りしました。
END
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