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今日で終わり

今日で終わり

千夏　　女。高校３年生。
姉
母
父
テレビの声

第一幕
千夏家のリビング。奥には日めくりカレンダーが掛けてあり、８月３１日を示している。
夕食後の風景。千夏は母と食卓の片付けをし、姉はテレビを眺め、父は新聞を読んでいる。
劇中、姉は基本的にずっと同じ立ち位置にいる。

姉　　　あっはっは。この芸人ほんっとおもしろーい。
千夏　　（姉を軽蔑の目で見ながら、片付けを進めている）
母　　　千夏。お手伝いありがとうね。
千夏　　夏休みだもん。これくらい当然だよ。
父　　　千夏、宿題は終わったのか？
千夏　　もちろん。もう３１日、夏休み最終日だよ？とっくに終わらせてるよ。
母　　　あら、偉いわねえ。
父　　　高校最後の夏休みだったんだ。もう少し、遊んでもよかったんだぞ。
　　　　夏休みの間、ずっと勉強ばかりしてただろう。
千夏　　ううん。もう受験も始まるし。それに、お姉ちゃんみたいには、なりたくないから。
姉　　　あははははっ！……んあ？何？
千夏　　はあ……。お母さん、洗い物やるよ。
母　　　いいわよ。明日の準備して、早く寝ちゃいなさい。
千夏　　でも。
父　　　千夏。たまには素直に甘えなさい。
千夏　　……うん。
母　　　さて、洗い物洗い物、っと。
父　　　風呂でも入るかな。

父と母、はける。

千夏　　……はあ〜〜。
姉　　　ちょっと千夏、なんなの、そのあからさまなため息。
千夏　　だって、今日で終わりなんだもん。夏休み。
姉　　　あんたずっと勉強してただけじゃん。何を惜しんでるのよ。
千夏　　明日になったら、本格的な受験生だよ？気が重いよぉ……。
姉　　　お父さんとお母さんの前じゃ意気込んでたじゃん。
　　　　「お姉ちゃんみたいには、なりたくないから」キリッ！みたいな。
千夏　　似てないからやめて。
姉　　　あんたさあ、もっと気楽にしたら？華の高校生活最後の夏休みをさ、
　　　　勉強だけに捧げるなんて信じらんない。もっと夏らしいことすればよかったのに。
千夏　　お姉ちゃんだってずっとぐうたらしてただけじゃん。
姉　　　あたしは毎日が夏休みだから。
千夏　　はあ。お姉ちゃん、高校生の時は頭も良くて運動もできて、尊敬してたのに。
姉　　　あらどーも。
千夏　　お姉ちゃん、将来どうするの？
姉　　　えー、そうだなあ。とりあえずー、結婚したいかなあ。
千夏　　じゃあまず家から出ようよ……。仕事もしないでだらだら過ごして。
　　　　お父さんとお母さんに申し訳ないって思わないの？
姉　　　親ってのは、子供が生きてるだけで喜ぶもんよ。
千夏　　仕事したらもっと喜ぶと思うけど……。
姉　　　うーわ、いじわるなこと言っちゃって。お姉ちゃんをいじめて楽しい？
千夏　　いじめてないでしょ、もう。
姉　　　あーあ。テレビも飽きたし、なんかゲームでもやろっかな。千夏もやる？
千夏　　……やんないよ。明日の準備しないと。
姉　　　つれないなあ。昔は２人でよくゲームしてたのに。

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