fragrance of tears
fragrance of tears
登場人物
クレイ……男性。25歳。不思議な技術で涙から香水を作る調香師。
エマ……女性。24歳。ショーパブ「エルドレア」の歌姫。芸名は「ティアラ」
ニック……男性。25歳。クレイの古い友人で工房をよく出入りしている。
ジェイク……男性。28歳。「エルドレア」の従業員でティアラのマネージャー。
ギルバート……男性。35歳。香水など、香りを扱うブランド「フルールペタル」の重役。
ライラ……女性。21歳。「フルールペタル」の従業員でギルバードの後輩。
1 雨の公園
(雨。人のいない夜の公園のベンチで一人、傘をさして座っている女性。泣いている。)
クレイ あ、やっと見つけた。
エマ えっ。
クレイ いやぁ、随分探しましたよ。
エマ ……えっと、お会いしたことありましたっけ?
クレイ いいえ、初めましてですよ、お嬢さん。
エマ 誰ですか、あなた。
クレイ まぁまぁ、僕のことはいいんですよ。それよりも、どうしてこんなところで泣いていたんですか?
エマ あ、あなたには関係ないじゃないですか。
クレイ えー、いいじゃないですか、少しくらい。僕、なんであなたがこんな雨の中で泣いてるのか気になっちゃったんですよね。
エマ ……恋人に振られちゃったんです。
クレイ あ、話してくれるんですね。
エマ え?
クレイ あぁ、いやいや。あんなに警戒心丸出しにされていたのに、お話しし
てくれるんだなーって思って。
エマ ……私、このまま帰ってもいいんですよ。
クレイ あーダメダメ。失礼しました。とんだ茶々を入れてしまって。それでは、続きを。なぜ振られちゃったんです?喧嘩でもしたんですか?
エマ (ため息)あの人、浮気してたんです。
クレイ まぁ、よくある話ですね。
エマ ……あなた、ほんと人の話聞くの下手ですね。
クレイ よく言われます。また失礼なことを言ってしまったみたいで。
エマ ……
クレイ 切り上げていただいてもいいんですよ?
エマ ……いいです。なんか話しちゃった方がスッキリしそうですし。
クレイ お姉さん、優しいんですね。
エマ あの人、ずっと浮気してたんです。1年前からずっと。しかも、本命は私じゃなくて浮気相手の方だった。私の知らない間に婚約までして。ずっと彼のために尽くしてるつもりだったのに……ほんと……バカみたい……(再び泣き出す。)
クレイ いいですね、お姉さん。もっともっと泣いてください。
エマ え?
クレイ あぁ、驚かないで。せっかくの泣き顔が台無しだ。
エマ 何を言ってるんですか?
クレイ あぁ、細かいことは後で。ちょっと失礼しますよ。
(ポケットから小瓶を取り出し、エマの頬に当て、涙を採取する)
クレイ うん。これだけあればいいでしょう。
エマ ちょ……何をしたんですか?
クレイ え。あぁこれ。あなたの涙をいただいたんですよ。
エマ (不審者を見るような目でクレイを見る)
クレイ 嫌だな。そんな顔しないでくださいよ。
エマ ……何に使うんですか、それ。
クレイ 香水を作るんですよ。
エマ こう……すい……?
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