【朗読】天使が涙を流す時
『天使が涙を流す時』

《登場人物》
澤口宙(そら)=天使1(新人劇団員)
音羽早苗=天使2(劇団代表)
佐野美月=天使3(劇団副代表)
砂川京香=天資4(劇団員)


SCENE1

鐘の音が鳴り響く。
天資1〜4が登場。
全員、椅子に座り、本を開く。

天使2 天使番号三二四八!
天使1 はい!
天使2 何故あのようなことをしたのだ。大天使ミカエル様はたいそうお怒りになっておられる。
天使1 勿論、私も迷いはありました。でも、天使番号一五三、どうか分かって下さい。
天使3 何を分かれというのだ。子殺しは大罪。ましてや母親の仕業とあっては、情状酌量の余地はない。
天使1 天使番号五三六、確かにあなたの言う通りです。私もそのことは分かっていました。
天使2 ならば何故、御定法を破ったのだ。
天使1 それは…
天使4 あなたの気持ちも分からなくはない。だが、法は法だ。
天使1 天使番号二八八一、あなたもやはり法の味方をするのですね。
天使2 法が守られねば、天上の秩序は崩れる。御定法を破ることは、神に楯突くことと同じだ。
天使1 しかし、彷徨える魂、罪深き魂をお救いになるのも神様のお力の筈。それをお助けするのも我ら天使の役目ではありませんか。
天使2 罪深き魂を、天上の門へ通すことはできん。救うべき魂と、救ってはならぬ魂がある。お前は、その見分け方を間違えたのだ。
天使4 天使番号一五三、天使番号三二四八はどのような罪になるのでしょうか。
天使2 当面の間は、牢に入ることになるだろう。その後、ミカエル様の詮議がある。最悪の場合…
天使3 最悪の場合…?
天使2 天上から追放ということもありうる。
天使4 我ら天使が追放される先といえば、まさか…
天使1 たとえ私に追放のお沙汰が下ろうと、あの母親の魂だけは、どうかお救い下さいますように。何故なら…
天使2 何故なら?
天使1 あの母親の真上に、天使の階段が現れたからでございます。私はあの階段の上から、母親を見付けたのでございます。天使の階段が人間の上に現れたのは、その人間の魂を救うために、我ら天使が神様に選ばれた魂を天上に導くための筈。私はそれを信じて、あの母親の魂を引き上げたのです。
天使3 成る程。となると、それは神様のご意志である可能性もある。
天使2 そんな筈はない。もし天使番号三二四八の言うことが事実だとすれば、何者かが意図的にその罪深き母親の頭上に、天使の階段を降ろしたのだ。神のご意志に反してな。
天使4 そんな大それたことを、一体誰が…。
天使2 それもこれも、今後の捜査と天使番号三二四八への詮議によって明らかになるだろう。(天使1に)さあ、一緒に来てもらおうか。
天使1 私は無実です!
天使2 それは神様がお決めになることだ。天使番号三二四八に縄を打て!
天使3・4 ははっ!

SCENE2

早苗(=天使2) カット!

他の三人、緊張を解く。

宙(=天使1) どうでしたか?
早苗 うん、いいんじゃない。少し肩に力が入り気味だから、余計な力を抜けば、もっとよくなると思う。
宙 有り難うございます!
美月(=天使3) 宙ちゃん、学生時代芝居やってたんだっけ?
宙 はい、一応、演劇サークルにいました。
京香(=天使4) どおりで板についてるわけだ。
宙 本当ですか?嬉しいです。
早苗 案外、前世が天使だったんじゃない?
宙 違いますよ。おじいちゃんが時代劇が好きだったので、一緒に見ていて言葉遣いを覚えたんだと思います。
美月 あ、そうか、成る程ね。(早苗に)ところで、話って何?
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