16才・ナガサキの夏1945
16才-ナガサキの夏1945-
ver.0.99
原案 某高校 演劇部 -掲載承諾済-
脚色 白神貴士(BOOGIE STUDIO)
・野口優子・・・16才。学徒動員で長崎市の兵器工場に勤めている。
・松尾麗子・・・15才。優子の親友。兄がガダルカナルで戦死している。
・野口典子・・・優子の妹。12才。
・西田進・・・・18才。麗子のいとこ。
・山本英一・・20才。野口家に下宿していた大学生。
学徒出陣で中国戦線に送られていたが、負傷して帰国する。
・野口八重・・37才。優子と典子の母親。出征した夫・正之の留守を守る。
・指導員・・・35才。兵器工場の指導員。
・子供・・・・・8才。火傷をして家族を失った子供。
・被爆者たち
* * * * * *
ナレーター
「1941年=昭和16年12月8日、日本軍がハワイの真珠湾を攻撃して、アメリカ
合衆国との『太平洋戦争』と呼ばれる戦いが始まりました。戦争はアメリカ有利
に傾きながら激しさを増し、昭和19年には日本は大部分の軍艦を失い、アメリカ
の爆撃機B29の大編隊による都市への爆撃=空襲に怯える毎日が始まりまし
た。中学校・女学校、そして現在の小学校高学年にあたる国民学校高等科の
生徒までもが兵器の生産のために軍需工場に駆り出され、昼夜交代12時間勤
務で働くようになりました。明けて昭和20年、アメリカは沖縄を攻略して日本の
本土に迫りましたが、日本は決して降伏しようとはせず、欧米から"自殺部隊"と
呼ばれた数々の特攻兵器を開発・増産して"本土決戦"に備えていました。
この物語の主人公は十六歳で県立長崎高等女学校の四年生、野口優子。五月
から学徒動員で長崎市の三菱兵器製作所大橋工場で働くことになり、魚雷の部
品にやすりがけをする仕事をしています。場面は昭和20年8月8日の朝、12時間
の夜勤を終えて優子が野口家に帰って来たところから始まります・・」
野口家の玄関を開けて、優子が帰って来る。
優子
「只今、帰りました・・・・お母さん、おなかがすいとるよぉ」
典子
「なんばいっとっと。若い娘がはしたんこと。」
妹の典子があひるのオモチャを持って出てくる。
優子
「あれ?典子、なしてこがん時間にいるの?工場はどがんしたと?お母さんは?」
典子
「おかえり優子ねえちゃん。今日は休みばい。お母さんは食料ばわけてもらいに
いっとるとよ。もうじき帰ってくると。」
優子
「食料って・・配給は昨日あったばっかいじゃなか?」
典子、口に指を当ててひそひそ声で制止する。
典子
「お姉ちゃん、シーッ!闇の物ば買いに行っとっとよ。」
優子、慌てて口に手を当てる。
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