楪を思ふ
『楪(ゆずりは)を思ふ』

キャスト
*久衛   (ひさもり)    男
*森乃菊勝 (もりのきくかつ) 男
*森乃菊千代(もりのきくちよ) 男
*勝久   (かつひさ)    男
*端役・敵兵・死体(英君)   男


戦場SE
明転
勝久、武将の死体、板付き


勝 久「やりました・・・勝久は、成し遂げましたぞ・・・!」


暗転


ナ レ「時は乱世。煙と、鉄と、血のにおいが、各地で漂う戦の時代であった」


明転
久衛、入場


久 衛「若様! どちらにおられますか、若様! まったく、こちらが目を離した隙に

    こうも颯爽と武芸の指南からお逃げなられるとは・・・はあ・・・

    一体いつになったら真面目に稽古を受けてくださるのか・・・

    こうも毎度毎度となると、いっそ自分の指南の腕が悪いのでは・・・」

菊 勝「また菊千代は逃げ出したか」


菊勝、入場


久 衛「菊勝様! 申し訳ありませぬ・・・自分が至らぬばかりに」

菊 勝「よいよい。久衛、お主にも面倒をかけるな。どうにもあやつには、この儂の

    せがれという自覚が足りん。いずれは儂の跡を継ぎひいては深山(みやま)の民を

    守る役目があるというのに・・・まもなく元服にも関わらず稽古からは逃げ出し、

    こうしてお主の手も煩わせるときた。軟弱にもほどがある」

久 衛「恐れながら菊勝様。若様は軟弱ではなく、優し過ぎるのです」

菊 勝「そう思うか?」

久 衛「はい。非常に思慮深く、かつ多くを救わんとする心根はまさに、

    この深山城(みやまじょう)を築いた時の菊勝様そのものでしょう」

1/10

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム