骨刻 -コツコク-
登場人物表
大住朋樹(20) 大学二年生
橋口 雪(20) 朋樹の彼女
西垣一士(36) 大学教授
小関奈々(20) 雪の友人
川口大輔(20) 朋樹の友人
橋口麻子(45) 雪の母親
橋口敏行(50) 雪の父親
1.
下手側に病室。雪、奈々、大輔がいるが照明暗くてよく見えない。
上手から走って来る朋樹。
ドアの前で立ち止り、服の水を払う。
朋樹「電話に気づくのが遅れた、だから駆けつけるのが遅れてしまって。彼氏失格だな、なんて呑気なことを考えながら病室の扉を開けた」
ドアを開けて中に入ると同時、下手側の照明明るく。
ベッドの上に雪、その周りを囲むように奈々、大輔がいる。
奈々「遅いわよ、大住くん!」
大輔「何してたんだよ、朋樹! 彼氏だろ」
朋樹「あ、えっと……」
雪 「傘、差さずに来たの?」
朋樹「急いでたから」
奈々「こらこら、大住くん。こういう時は、雪に会いたくて傘差す時間すら惜しかったっていうものよ」
朋樹「時間が惜しいというか、早く会いたくて傘差すのも忘れて」
奈々「えっ?」
朋樹「えっ?」
大輔「このっ、見せつけてくれちゃって!」
雪 「二人とも、朋樹のことからかわないで。私の彼氏は恥ずかしがり屋なんだから。奈々、そこのタオル朋樹にあげて」
奈々、棚にあるタオルを朋樹に渡す。
奈々「じゃあ、私たちは帰るから」
大輔「えっ? お見舞いの饅頭一緒に食べようってさっき……」
奈々「はいはーい、空気の読めないおバカさんは私が連れて帰るから。お二人さん、ごゆっくり」
奈々と大輔が出て行くのを見送り朋樹と雪、向き合う。
朋樹「えっと、ただいま」
雪 「ただいま?」
朋樹「あっ、いや……」
雪 「ふふっ。おかえり、朋樹」
朋樹「……ただいま、雪」
照明、薄暗く。
雪 「ねぇ、朋樹。私が生きたという証を刻んでくれる?」
朋樹「雪、俺は」
雪 「あなたの心に、身体に、指に、骨に」
朋樹「君が生きていたという、証を」
雪 「骨刻(こつこく)、それが」
朋樹「彼女の遺言の名前」
雪 「私が生きていたという証拠の」
朋樹「彼女が存在していた証をこの世界に刻むための」
雪 「生死が私達を引き離したとしてもきっと、ともに生きる方法はある」
朋樹「それを模索した僕たちの」
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