BIRD CAGE
人物
ロビン…ケア・アンドロイド。
アトリ…特別孤児保護施設「SOrPFA(ソルファ)」の孤児
イスカ…同上。
ノジコ…同上。
ツグミ…同上。アトリと同様の役者が演じる。
カケス…ロビンを整備する技師。
舞台設定は近未来。本来の目的では使われていない古びた病院内で全てが進行する。
ステージ上には、下手側から、古びた棚、古びた空箱、背もたれのない簡素な木製のイス四脚。
(それらは一人ないし二人で持ち運び可能な大きさと軽さでなければいけない。イス四脚はときにベッドに、単体でイスにもなり得る)
棚には様々なモニュメントやガラクタ、ガラス瓶、ぬいぐるみ、本、写真立てなどが収められている。
バラバラに収められているモノたちは、いずれもアトリ・イスカ・ノジコ・ツグミ4名それぞれの持ち物である。どのモノにも、その持ち主らしさが出ている。
ロビンは彼女たちが死ぬ度に、このモノたちを箱に片付けなければいけない。
○モノローグ
朝。
グレーもしくは茶色を基調にした粗末な恰好のロビン、出てくる。
ロビンはこの院内での唯一の常勤ロボットなので、粗末だがシンプルで動きやすい服装を与えられている。
ロビン「R0610、初期設定モード、開始します。第一ユーザー登録……登録完了。用途、自然保護11区番内、特別孤児保護施設『ソルファ』における、炊事・洗濯全体の家事業務、および入所者の観察・生体データ収集。……名前を設定しました。こんにちは、私の名前は、ロビン」
S.E. さまざまな声で「ロビン」を呼ぶ声が幾重にも重なり、ノイズのように聞こえてくる
暗転。
●二一九八/十/三一/夜。
青っぽい照明。夜である。
白い病衣のようなものを着たアトリ、出てくる。
(病衣のような服装だが、普段の生活を送る際も同じ格好なので比較的それぞれが白が基調の、色のない服装をしている。)
アトリ、以下の唄を口ずさむ。
(この歌は三拍子で、童謡のようなゆったりしたリズムである)
しろがねいろの もりのよるは
やまのはまで しずかに そまりゆきます
アトリ「ねぇロビン、この歌、お葬式の唄。……覚えていてね」
ロビン「……なぜです」
アトリ「私がいなくなったら、ロビンがみんなに歌ってあげて。この歌を歌ってるとね、安心するから」
ロビン「安心」
アトリ「もう私は、長くないから……」
ロビン「はい」
アトリ「あ、それとね、ロビンにもう一つ、お願いがあるの」
ロビン「なんでしょうか」
アトリ「棺には、花をたくさん入れてね。私だけじゃなくて、皆にも」
ロビン「花を、入れる?なぜです?」
アトリ「私がそうして欲しいから。約束、ね!」
ロビン「わかりました」
アトリ「……ありがとう。ロビンが来てから、この病院の空気が穏やかになった気がする」
ロビン「それが、私の仕事ですから」
アトリ「死んでいった皆も、きっと天国でありがとうって思ってるよ」
ロビン「死んだ人間は、ありがとう、と思うことはできません」
アトリ「そうだね……あーぁ! 私たちもロビンと同じ、『つくりもの』だからさ、ずーっと、は進めないんだよね」
ロビン「進む、とは?」
アトリ「望むこともできないし、思い描いたところに、飛べもしない」
ロビン「アトリ、私には言葉の意味が、よくわかりません」
アトリ「でも、ロビンはその向こうに行ける日がくるといいね」
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