あいつ
あいつ
人 物
あいつ
俺
先生
男の子
母親
幹事
ウエイトレス
他
俺のN あいつのことは忘れられない。最初に出会ったのは高校の文学クラブの部室。顧問の先生が部員の作品の講評をしていた。
♪虎だ!虎だ!おまえは虎になるのだ!」
タイガーマスクのテーマ曲。
母親 テレビばっかり見ていると、今に尻尾が生えてくるわよ!
男の子 お母さん、それもテレビで言ってたことだけど、お母さんは尻尾が生えてこないの?
母親 まあ
男の子 尻尾が生えて虎になったらかっこいいじゃん!ライオンマンと一騎打ちだ!
母親 ったく、可愛げがないんだから
先生 …と、ここで終わっているんだが、これは君の幼少時のことかね?それにしても本当に可愛げがないね~。今もそうだが(笑)
SE 教室の笑い声。
あいつ もちろん! ウルトラタイガードロップなんて練習して、障子破って…
先生 じゃあ、何故、体育会系に行かなかったんだね?
あいつ インドア派でして、だからテレビばっかり見てたので
先生 行ってたら、本当にグレートゼブラとタッグを組めていたかも知れないのに
あいつ 先生もご覧になっていたのですか?
先生 (咳払い)君は作家になりたくて、書いているのかね?それとも書きたいことがあるから作家になろうというのかね?
あいつ 新聞の新刊広告を見てください。作品の名前よりも作家の名前がでかでかと出てますよね?これ内容など二の次、作家の名前で客を呼んでいる。~一発、当てて、印税生活ですよ!ウハウハ!
先生 君ね~!私は君にか書けない、君だけのオリジナルなものをだね~
あいつ 常套句ですね~。お言葉ですが、世の中の作品に、純粋オリジナルなものなんてありますか? 文学研究だって、そうでしょう。出典、典拠探しばかり、つまりはイタダキ探しで。実話にそれほど、意味なんてあるとは思えませんが?
先生 本当にもう…君の屁理屈はもういい!これだって私小説にもなっておらん! まったくくだらない~! じゃ次はー」
俺のN それが、あいつとの出会いだった。その後、あいつはクラブにも来なくなった。そのまま、卒業していった。
SE ブリッジ(時間経過)
SE 駅・改札
俺のN 何年か後、あいつとバッタリ、あったのは駅の改札口から出たところだった。
SE バッグから紙片を取り出す。
俺のN 俺の作品が、小さな出版社の新人文学賞の佳作に選ばれて、その授賞式に行く途中だった。
SE 都会の雑踏
辺りを見回している俺。。。
あいつの声 おう、お前じゃないか!
俺のM 俺が振り返ると、あいつが立っていた。
あいつ 相変わらず方向音痴か?
俺 いや、その、ちょっと
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