水面に揺れる
       
       
       
       水面(みなも)に揺れる
       
       
       
       作:麻井 美希
       
       登場人物
       
横井 風花
若本 真美
相川 紗奈

小萩
ミズハ

若本 椿
鳥井 あけみ
横井 夏希





プロローグ 沢野・過去

渇いた風の音に交じり、人々のうめき声が聞こえる。
舞台が徐々に明るくなる。干ばつに見舞われた沢野の村人達が浮かび上がる。飢えと渇きに苦しみ、嘆きの声をあげている。

沢野の地を治める領主の娘・小萩が駆け込んでくる。人々は小萩にすがる。

小萩     (すがる村人を抱きかかえながら)神様!この地に水を!どうか人々をお救い下さい!

小萩の声に応えるように、天から声が響く。と、同時に周りの時間は止まる。

ミズハ(声)  願いの対価は?
小萩     (立ち上がり)・・・私の・・・私の命を!
ミズハ(声)  ・・・後悔はないのね。
小萩     それで皆が助かるのなら。

雷の音。小萩の背後にミズハが現れ、小萩の心臓に手をかざす。小萩はその場に倒れ、息絶える。
小萩を抱きかかえ、ミズハは手を振り挙げる。轟音と共に水が噴き上がり、雨が降り始める。
周りの時間は動きだし、人々は雨に歓喜の声をあげる。しかし、村人には小萩とミズハは見えていない。

息絶えたはずの小萩が目を覚ます。周りの景色に目を見張る小萩。
ミズハは小萩に手を差し伸べる。訳の分からないまま、ミズハの手をとる小萩。
行き交う人々に二人の姿は隠されていく。

椿(声)   遠い遠い昔の話。日照りに苦しむ村を、お姫様が命と引き換えに救った。お姫様が倒れていた場所には大きな池が出来てね、その水が村をうるおした。今は誰も知らない、昔の話さ・・・。

暗転。

第一場 沢野・椿の駄菓子屋

人口8000人の大川町。その外れにある沢野地区は過疎化が進み、今年度で地域の小学校が閉校になる。
沢野で育った風花・真美が、真美の祖母である椿の経営する駄菓子屋兼生活用品店の店先に座っている。店の奥は椿達の居住スペースとなっている。

アブラゼミの鳴き声が遠くに聞こえる。
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