ヘルメスの鬼謀
ヘルメスの鬼謀

大橋:詐欺集団「北斗七星」の依頼人
未来(みく):北斗七星の看板詐欺師
田所恭弥:投資グループ「TADOKORO」CEO
オーナー:北斗七星運営責任者
池尻:投資家
小谷玲奈:女性キャスター
その他エキストラ複数

<オープニング>
舞台右側の大橋にスポット点灯

大橋:確かに俺は騙されました。騙されて、全てを失いました。でも、人が人を信じるってそんなに悪い事ですか?誰かを疑い出したらキリが無いし、人は嘘をつき通す事なんて出来ないんです。嘘は、使い捨てるからこそ嘘になる。最後はいつだって、目の前には真実しか残らない。だから俺は、あなたを信じます。

大橋のスポットオフ、舞台左側の未来にスポット点灯

未来:人間て、結局最後は自分が1番可愛い生き物なの。自分を守る為なら他人を騙す事だって何とも思わない。「人を信じる」なんて事を平気で言う奴は信じ縋るモノが無いと生きていけない弱い奴か、他人を騙そうと企んでる悪党のどちらか。だから私は、あなたを信じない。

暗転

<1場>町の飲食店→北斗七星事務所
舞台右側にオーナーとシェフ風の男性が2人居て話し込んでいる。

オーナー:そうですか、ではこの不動産物件はご購入されないと。

シェフ:周囲の雰囲気は悪くないですが、駅からはかなり離れていますよね。徒歩20分って。これだと店をオープンしても客が集まらないかもしれない。それにこの物件に4000万は高過ぎる。わざわざ来てもらったのに申し訳ありませんが、今回は遠慮しておきます。

オーナー:分かりました。良い物件ではあるのですが、残念です。そうしましたら、ここに人を1人呼んでも宜しいでしょうか?貴方の他にもう1人、飲食店を開こうとこの物件の購入を検討されているお客様が居りまして。貴方が購入しないとなった場合、直ぐに契約をしたいと仰るもので。

シェフ:え?…はあ、構いませんが。

オーナー:有難うございます。(奥に向かって)どうぞ。

未来、登場。男性を挟んでオーナーと未来で話し始める。

オーナー:(男性を示して)お断りになられました。

未来:本当に!?やった、それじゃこの物件は私のモノだ!

オーナー:良かったですね。

未来:はい!駅からは遠いけど物件のすぐ近くにもうすぐデパートがオープンするから、その客を取り込める!

シェフ:え?

オーナー:ご契約頂けるならば4000万を1000万に値下げさせて頂きますよ。

男性:え!?

未来:それに飲食店が成功するかしないかは、結局料理人の腕次第ですからね。どんな所に居ても一流の料理人には客が集まって来る。料理が美味しければ、ね。

オーナー:確かに、店舗の立地なんて言い訳に過ぎないですよね。

シェフ:買います!

未来・オーナー:え?

シェフ:(興奮気味に)この物件は僕が買います。これでも料理の腕には自信がある!

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