プロポーズ
  「プロポーズ」
  テーブルを挟んで男が二人向かい合わせに座っている。
  どちらも喋らず、妙な雰囲気。

男1 あの・・僕と結婚して下さい。
男2 ・・・・・・・・。
男1 (指輪を取り出し)これ。給料の指輪です。

   間

男1 お願いします!
男2 とりあえず、それしまおうか。
男1 駄目ですか?
男2 ん~~~駄目というか。
男1 (思いついて)俺のパンツを洗ってくれないか?
男2 え?あ、パンツね。
男1 君の残りの人生を僕にくれ。同じ墓に入ろう。僕の子供を産んでくれ。第一印象から決めてました。
男2 ストップストップ。言えばいいってもんじゃないから。しかも最後の違うし。
男1 はい。でも失敗するのヤなんです。
男2 ん~とね。根本的にそこじゃないんだ。
男1 と言いますと?
男2 練習をね。するのは別に構わないんだ。プロポーズの。
男1 はい!
男2 ただね。練習相手が何故私なのかな。
男1 駄目ですか?
男2 駄目~~駄目~~~・・・・・。駄目かな。
男1 どうしてですか?
男2 関係性の問題だね。僕と君との。
男1 あ、男同士だと気まずいですか?
男2 そこじゃない。それもあるけど。
男1 違う女性でやって本気にとられると困るので。
男2 すごい自信だね。
男1 恐縮です。
男2 君は誰にプロポーズをしようとしてるのかな?
男1 大西カナコさんです。
男2 そうだね。で、私は?
男1 カナコさんのお父さんです。
男2 そこだ。
男1 はい!
男2 わかってる?
男1 はい!!もう一回お願いします。
男2 わかってないね。
男1 恐縮です!
男2 君がプロポーズをするのは。
男1 大西カナコさん。
男2 で、僕は、
男1 カナコさんのお父さん。
男2 それだ。
男1 ありがとうございます!(凄い嬉しそう)
男2 あ、うーーーん。そうか。じゃあ私も遠まわしに伝えるの辞めるね。
男1 はい。
男2 一般的にね。花嫁の父をプロポーズの練習相手にはしないのね。
男1 はい。
男2 自分で言うのもナンなんだけど。花嫁の父って最も気を遣わないといけない相手なのね。その相手をプロポーズの練習に遣うってちょっと問題なのね。
男1 はぁ。
男2 しかもカナコを抜きにした時の私たちの関係性は?
男1 部長。
男2 そうだね。僕は君の上司だ。正確に言うと上司の上司だ。その相手を練習代に使うって、なんていうかちょっと勇気があるよね。
男1 ありがとうございます!
男2 言葉尻だけとらないで。褒めてないから。
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