砂海のマモリギ
登場人物
アレン(少年期)……砂漠の村に住む少年
ハンナばあちゃん……アレン少年の祖母
ブコビッチ村長……砂漠の村の村長
タイゲン……村長の部下
ラキ(少女期)……アレンの家の近くに住む少女。マリナの娘
マリナ/ラキ(娘期)……アレンの家の近くに住む女性/成長したラキ
クレア……アレンの家の近くに住む女性。
ロクサーヌ……東方司令長官。西の国の王女。
ランス/アレン(青年期)……アレンの父親/成長したアレン
謎の声
〇プロローグ
大砂漠の中に取り残されたようにある砂漠の村。村には【守り木】と呼ばれる大木がある。熱い日差しを遮る事のできる守り木の木陰は、村で最も人の集まる場所である。近くには給水塔と呼ばれる小屋がある。
ハンナ声 「この村は東の国と西の国のちょうど真ん中。ゆえに、いにしえからこの村は、東から西に、西から東と飛び交う者たちの道しるべ。誰もが村のオアシスで羽を休めたものさ。しかしひとたび西と東で争いが起これば双方の血が流れるいくさ場となる。あのときもはじめはそう、いにしえよりくり返されてきたいくさと同じ、誰もがそう思っていたんがね……」
〇場面①砂漠の村(朝)
村の朝。給水塔の前では女(クレア)がバケツに水を汲んでいる。その後に女(マリナ)が、最後尾には少年(アレン)の姿もある。給水塔の前には監視をする隻腕の兵士(タイゲン)がいる。
マリナ 「けど、まだ朝だってのに暑いったらありゃしないね」
タイゲン 「まあ、季節が変わってきたんだろうよ」
マリナ 「そういえば、そろそろ西の国の水役人がタンクの交換に来る頃じゃないの?昨日の月はかなり薄かったし」
タイゲン 「明日の夕方には来るだろうよ。旦那から手紙が来るといいな」
マリナ 「来やしないわよ!あんなごくつぶし!もう仕送りだって何ヶ月も来てないしね。手紙が届くとしたら離婚届じゃないの?」
タイゲン 「お前なあ……だったらあんな流れ者のキザ野郎と結婚なんかするなよ」
マリナ 「いいの。私にはラキがいれば充分」
タイゲン 「お前には充分でもラキはそうじゃないだろ。ふた親いた方が……」
マリナ 「あーうるさいうるさい。それよりも水役人が来るんじゃあ、いまやってる布、早く仕上げないとね。そうだアレン、ハンナさんに紡いだ糸があったら持ってくるように言っといてくれる?」
アレン 「わかった」
タイゲン (クレアの方を見て)「おっとそこまでだ」
クレア、給水塔に付いてるポンプレバーを上げ水を止める。クレア、バケツを持ち上げる。
クレア 「いつもお疲れ様です」
タイゲン 「おお、気をつけろよ」
クレア (守り木に向かい手を合わせ)「守り木様、今日も私たちをお守り下さい。……じゃあ、マリナ、先に行くね」
マリナ 「うん、また後でね」
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