Ceremony(リモート演劇用脚本)
『Ceremony』(セレモニー)
作 渡辺キョウスケ
(※これは、ZOOMを使用したリモート演劇用に書かれた戯曲です。)
《登場人物》
・マキ(菅原 真樹・女)・・・エイジを好きだった女。
・タクミ(小橋 拓巳・男)・・・エイジと付き合っていた男。
・エイジ(奥村 英二・男)・・・故人。※登場しない。
ZOOMの画面上に、マキの顔が映し出される。
マキ、喪服を着ている。
そわそわしながら、誰かの入室を待っている。
しばらくして、誰かが入室する。
マキ「(それに気づき)あ、」
画面が二分割になり、もう一つの枠に、タクミの顔が映し出される。
タクミも、マキと同じく喪服を着ている。
タクミ「あ、聞こえます?」
マキ「うん、聞こえる。こっちは?」
タクミ「大丈夫です、聞こえてます」
マキ「久しぶり」
タクミ「お久しぶりです」
マキ「4年ぶりか」
タクミ「ですね」
マキ「長いね、4年は」
タクミ「長いですよ」
マキ「元気?」
タクミ「ええ、まあ。そちらは?」
マキ「うん、こっちも元気」
タクミ「そりゃ良かった」
マキ「うん・・・何か緊張するな」
タクミ「え?」
マキ「いや、コレ。リモートっていうの?初めてだからさ、やるの」
タクミ「そうなんですか?」
マキ「うん。タクミ君はやったことあるの?」
タクミ「ええ、仕事でいつも」
マキ「へえー、やっぱり東京は違うね」
タクミ「東京関係ないですよ」
マキ「そっち、今大変なんでしょ?」
タクミ「ええ、何か、ニュースを聞く限りでは。住んでる人間としては、あんまり実感ないですけど」
マキ「そうなの?」
タクミ「在宅のリモートワークに切り替わって、もう1年近く経ちますし、何ていうか、慣れましたよね」
マキ「そういうもんか」
タクミ「ええ。新しい生活様式、ニュー・オーダーですよ」
マキ「(笑って)ニュー・オーダー。エイジ君が好きだったバンドだっけ?」
タクミ「違いますよ。アイツが好きだったのは、ニュー・オーダーじゃなくて、ジョイ・ディヴィジョンの方です」
マキ「ああ、そうだ。その、ジョイ、」
タクミ「ディヴィジョン」
マキ「それだ。でも確か、名前が違うだけで、同じバンドなんでしょ?」
タクミ「まあ、確かにほとんど同じメンバーですけど。ジョイ・ディヴィジョンのボーカルのイアンが亡くなって、代わりにギターのバーニィがボーカルになって、で、ドラムのスティーヴンのガールフレンドのジリアンがキーボードで入ったのが、ニュー・オーダーです」
マキ「ふーん。そのジョイ何とかの方は、試しに聴いてみたことあったけど、何か暗い曲ばっかりで、全然好きになれなかったな」
タクミ「暗いのが良いんですよ、ジョイ・ディヴィジョンは」
マキ「え?何それ、マウント?」
タクミ「は?いや、違いますよ。何でそういうことになるかな」
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