脚本ダウンロードサービス

配置薬は忘れた頃に

【配置薬は忘れた頃に】作／上田真平（劇団NEW WAVE）

■登場人物：３人（男性１人、女性２人）
●男…………男性。とあるアパートに住む男。妻とは別居中。
●配置員……女性。近江薬品の配置員。スムス手袋をつけている。
●千春………女性。ちはる。男の妻。別居中。

　　　　　　　　　　　　＊＊＊

　　　　　　　　――とあるアパートの一室。
　　　　　　　　男が寝ている。
　　　　　　　　配置員がやってくる。スムス手袋をつけている。
　　　　　　　　配置員、男の部屋の玄関前に立ちドアチャイムを押す。（ピンポーン）

　　男　　ん？

　　　　　　　　男、チャイムに気づき起きるも、二度寝。
　　　　　　　　配置員、再びチャイム。
　　　　　　　　（ピンポーン……ピンポピンポピンポピンポーン！）

　　男　　あぁ！

　　　　　　　　男、起き上がり玄関へいき、扉を開ける。

　　男　　はい、何！？
配置員　　こんにちはー。近江薬品ですー。
　　男　　あぁ、セールスですか？　ウチはそういうの――
配置員　　セールスじゃありません、配置薬の集金に来ました。
　　男　　え、ハイチヤク？
配置員　　はい。配置薬――あれ？
　　男　　何？

　　　　　　　　配置員、中を覗き込んで、

配置員　　あの、いつも対応してくださってる方は？
　　　　　えーと、（資料を確認して）
　　　　　――あ、千春さん。奥様ですか？
　　男　　まぁ。
配置員　　千春さんご不在ですか？
　　男　　はい。
配置員　　そうですか。夕方ごろでしたらおられます？
　　男　　いません。ていうか、何？　集金？　なら俺払います。
配置員　　いらっしゃる時で大丈夫ですよ？
　　男　　いや……いつ帰ってくるのかわからないっていうか、その――
　　　　　もう帰ってこないかもって感じで……いや、いいです、俺払いますから！
配置員　　えっ？　……あッ！！　奥様が今いないって――もしかして？
　　男　　……。（頷く）
配置員　　あぁー、ケンカして出って行っちゃったんですかー！
　　男　　ちょ、ちょっとちょっと。声大きいな！　……中どうぞ。
配置員　　そうですね、立ち話もなんですし。
　　男　　それコッチが言うセリフでしょ。
配置員　　お邪魔しまーす。

　　　　　　　　配置員、男をよけ、先に部屋の中に。
　　　　　　　　配置員、部屋を見渡して、

配置員　　へぇー……あ、申し遅れました（名刺を取り出して）
　　　　　私、近江薬品の――

1/6

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで！