サカムケのヴィーナス
【 サカムケのヴィーナス 】作/上田 真平(劇団NEW WAVE)

■登場人物:5人(男性2人、女性1人、不定2人)
●学芸員……不定。とある美術館に勤める学芸員。
●客…………不定。とある美術館にやってきた客。
●画家………男性。とある王国で一番の宮廷画家。関西弁。
●弟子………女性。田舎から絵描きを目指して出てきた。画家の弟子。訛りがぬけない。
●大臣………男性。とある王国の大臣。


            *** 

        ――とある美術館。
        学芸員が椅子に座っている。

学芸員 ふぁぁー(生あくび)……!

        客がやってくる。学芸員、それに気づきビシッとする。
        客、張られたロープの前で絵を鑑賞している。
        (※絵は舞台中央の客席側にある体)

  客 ん?

        客、何かを見つけて歩み寄り、
        ロープからはみ出さんばかりに身を乗り出す。

学芸員  お客様、お客様!
  客  はい?
学芸員  あまり近づき過ぎないようお願いします。
  客  ああっ! ごめんなさい。つい。近眼なもので。
学芸員  お気持ちはわかります。
     でも飛沫が飛んでしまう可能性がありますので。ごめんなさい。
  客  ですよね。すみません。

        間

  客  変わった絵ですね。
学芸員  はい! なんといっても当美術館の目玉ですからね!
  客  へぇー、有名なんですか。
学芸員  えっ!? ご存じない!?
  客  えっ、そんなに有名なんですか?
学芸員  あ、失礼しました!
  客  ……私、美術とか疎くて。無料招待券もらったんで、
     涼みがてらいいかなぁー、なんて思って来てみたんです。
学芸員  そうですか……。
  客  なんかすいません
学芸員  わかりました! では、私が解説させていただきましょう!
     こちらの作品「サカムケのヴィーナス」はですね――
  客  サカムケのヴィーナス!?
学芸員  はい。
  客  サカムケって、あの、指にできるアレ、ですか?
学芸員  アレです。
  客  パンチの効いたタイトルですね。
学芸員  こちらの作品「サカムケのヴィーナス」は、
     中世を代表する宮廷画家によって描かれました。
     ――っと、作者の紹介をする前に、この絵を語る上で一つ、
     欠かせないエピソードがありましてね――

            ***

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